2007 Fiscal Year Annual Research Report
フォンタン型循環における肺血管のエンドセリン関連蛋白の分布とその動態
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19790718
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 葉子 Osaka University, 医学系研究科, 助教 (50437323)
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Keywords | Fontan型手術 / エンドセルン受容体 |
Research Abstract |
【背景】近年、Fontan型手術は二心室修復の困難な様々な先天性心疾患に適用され、その治療成績は改善してきているが、Fontan手術未到達例や術後遠隔期の死亡例も少なからず存在する。予後不良症例ではFontan手術時の肺生検において、すでに末梢肺動脈壁の肥厚が存在するという報告もあり、Fontan candidateにおける肺血管の病理生物学的検討の意義が問われている。一方、肺血管収縮因子として重要なEndothelin-1(ET-1)の受容体拮抗薬が臨床応用されているが、Fontan循環においては血中ET-1濃度の解析の報告があるだけで、肺血管局所におけるET-1やET受容体Type A(ET-_AR)、Type B(ET-_BR)の発現について検討された報告は無い【目的】Fontan循環での肺血管局所におけるEndothelin system の役割を明らかにするため、今回はFontan術後死亡例の肺の組織学的検討とその臨床背景を比較検討した。【対象と方法】1982年かも2000年までにFontan型手術を施行され、その後死亡した10例(F群)と、正常対照(心疾患以外の死亡例)4例(N群)について、剖検肺組織を用い、H-E染色および免疫組織染色を行い、その発現パターンを解析した。【結果】死亡時年齢はF群:13.0±6.1歳、N群:10.0±1.5歳であった。Fontan手術から死亡までの平均年数は4.9±3.9年で、術後の平均肺血管抵抗値は、3.0±0.7U・m2であった。肺動脈壁厚(% Wall Thickness)は、肺動脈径を100μm以上、50-100μm、50μm以下に分類すると、N群でそれぞれ、12.7±3.5、12.3±5.9、 13.9±6.3であったのに対して、F 群ではそれぞれ31.1±14.0、30.7±13.0、31.0±11.2と、どの径においても有意に肥厚していた。免疫組織染色では、肺血管内皮におけるET-1とET-_AR、血管平滑筋におけるET-_BRの発現もF群で有意に上昇していた。【考察】Fontan術後死亡例において、肺血管局所におけるEndothelin関連蛋白の発現は上昇しており、Fontan循環を破綻させる要因の一つである可能性がある。
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