2008 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザ脳症発症を誘起する感受性因子の解明を基盤にした治療法の開発
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19790724
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
千田 淳司 The University of Tokushima, 疾患酵素学研究センター, 助教 (20437651)
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Keywords | インフルエンザ / 脳症 / MOF(多臓器不全) / ミトコンドリア / 脂肪酸代謝不全 / ATP(アデノシン三リン酸) / サイトカイン / 分子生物学 |
Research Abstract |
インフルエンザは、ウイルスが気道粘膜に感染することで起こる急性の呼吸器感染症であるが、特に小児期にはインフルエンザ脳症や多臓器不全など重症化する可能性が高い。これらの患者検体あるいは感染動物を用いた解析から、インフルエンザ脳症を誘起する3つの因子(1. 内因性因子, 2. 外因性因子, 3. 代謝性因子)の存在が本研究により明らかとなった。 1) 内因性因子 ミトコンドリアの脂肪代謝酵素であるCPT2遺伝子に特定の遺伝子多型がある患者では、ウイルス感染による高熱時にCPT2の酸素活性が低下し、細胞内のエネルギー(ATP)の枯渇が起こることを明らかにした。この研究を基盤にして、患者の末梢血ATPレベルを測定するシステムを開発し、これにより患者の重症度をモニタリングすることが可能となった。 2) 外因性因子 ウイルス感染によるストレス、ジクロフェナック等の投薬が重症化に関与するものと示唆された。 3) 代謝性因子 生命活動に必要なATPの産生は、小児期では糖代謝ではなく脂肪酸代謝に大きく依存しており、脂肪酸の代謝酵素の活性低下がインフルエンザ脳症発症の主要因であることが明らかになった。 上記の3つの重症化因子を標的とした安全なインフルエンザ脳症の治療法を開発するため、脂肪酸代謝障害モデルマウスを作出し、このマウスにインフルエンザウイルスを感染させた後、種々の治療薬の投与効果について検討した。その結果、DCA混合薬が非常に有効な治療薬であることが明らかとなってきた。このDCA治療薬は、糖代謝の基質であるピルビン酸-Naと糖代謝酵素の活性代剤(ジクロロ酢酸など)の混合剤であり、ミトコンドリアの脂肪酸代謝が抑制されてATPの枯渇が引き金となる本症において、DCA治療薬は糖代謝によるATP産生を亢進させて、脂肪酸代謝によるATPの産生を代替的に補償するものである。今後は、動物実験を実施してDCA治療薬の安全性の評価試験を行う予定である。
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Research Products
(11 results)