2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790946
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
上野 康晴 Yokohama City University, 医学研究科, 助教 (60375235)
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Keywords | 発癌 / 幹細胞 / フローサイトメトリー |
Research Abstract |
本研究では、肝幹細胞における自己複製の維持やその破綻から生じると考えられる肝発癌過程の理解を深めるため、幹細胞の自己複製に関与するポリコーム群タンパク質に着目し、肝発癌過程における機能の同定を目指している。本年度は、当初、ヒト肝癌組織を用いたポリコーム群タンパク質の発現プロファイル作製を計画したが、競合グループから臨床検体における発現解析例が報告されたため、詳細なメカニズム解析を目指した。 我々はこれまでにポリコーム群遺伝子であるbmilが肝幹細胞の過剰な自己複製を誘導し、腫瘍形成能を持つことを確認していたため、ポリコーム群タンパク複合体内においてBmilの制御標的と考えられるRing1Bについて詳細な解析を行った。そこで、ringlbコンディショナルKOマウスを用いて肝幹細胞においてringlb遺伝子を欠損させ、その表現型をin vitroおよびin vivoで解析した。また、レトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入系を構築してringlb遺伝子とbmil遺伝子の機能的な関係を解析した。その結果、肝幹細胞においてringlb遺伝子を欠損させると、肝幹細胞の増殖性が著しく抑制され、さらに肝細胞のマーカーであるアルブミンと胆管上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン7をともに発現する未分化な細胞が減少することを観察した。このとき、Bmi-1の標的遺伝子であるink4a/arfが脱抑制されることを見いだした。さらに、ringlbを欠損した肝幹細胞において、bmilを過剰発現させた場合、ringlb欠損による細胞増殖の抑制が解除されないことを確認した。これらのことから、ringlbはbmilを介した肝幹細胞の自己複製において重要な働きを担うことが明らかとなった。現在、bmilを介する腫瘍化過程の理解に向けて、bmilとringlbの下流遺伝子について検討を行っている。
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