2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790946
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
上野 康晴 Yokohama City University, 医学部, 助教 (60375235)
|
Keywords | 発癌 / 幹細胞 / フローサイトメトリー |
Research Abstract |
肝幹細胞における自己複製の維持やその破綻から生じると考えられる肝発癌過程の理解を深めるため、エピジェネティックな制御因子として幹細胞の自己複製に関与するポリコーム群(PcG)タンパク質に着目し、肝発癌過程における機能解析を行った。当初、ヒト肝癌組織を用いたPcGタンパク質の発現プロファイルの作製を計画したが、競合グループから臨床検体における発現解析例が報告されたため、PcG遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを用いてより詳細な機序解明を試みた。我々はこれまでの研究において、PcGタンパク質Bmilが肝幹細胞の自己複製で重要な機能を担っていることを見いだしていることから、本研究では特に核内でBmilと直接結合しPcGタンパク質が担う転写抑制機能の中心を担っていると考えられるPcGタンパク質の一つであるRing1Bについて詳細な解析を行った。 まずはじめに、Ring1Bコンディショナルノックアウトマウスを用いてRing1Bが肝幹細胞の自己複製制御に関与するか否かを検討した。その結果、Ring1Bを欠損した肝幹細胞では肝幹細胞の増殖性が著しく抑制され、さらに肝細胞のマーカーであるアルブミンと胆管上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン7をともに発現する能力を有した未分化な細胞が減少することが観察された。また、肝幹細胞の自己複製におけるBmilとRing1Bの機能的関係を明らかにするため、その端緒的解析としてRing1Bを欠損した肝幹細胞におけるBmilの過剰発現実験を行った。Ring1Bを欠損した肝幹細胞にレトロウイルスベクターを用いてBmi1遺伝子の過剰発現を誘導したところ、Ring1Bの欠損による細胞増殖の抑制は解除されないことが明らかとなった。このことから、各ポリコーム群タンパク質が標的とする遺伝子の中でも、特にRing1Bの制御下に置かれている遺伝子群が肝幹細胞の自己複製で重要と考えられた。 これらの研究により、肝幹細胞の自己複製においてポリコーム群タンパク質Rin1Bが重要な機能を担っていることが確認された。
|