2008 Fiscal Year Annual Research Report
アンジオテンシンII2型受容体の神経保護作用に注目した新しい神経疾患治療の研究
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19791000
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
茂木 正樹 Ehime University, 大学院・医学系研究科, 講師 (20363236)
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Keywords | 脳梗塞 / 虚血再環流障害 / アンジオテンシンII2型受容体 / 骨髄ストローマ細胞 / 細胞治療 / 炎症 / 脳浮腫 / アンジオテンシンII受容体ブロッカー |
Research Abstract |
脳梗塞後遺症に骨髄ストローマ細胞を用いた細胞治療の臨床応用が期待されているが、骨髄ストローマ細胞(MSC)で強く発現しているAT_2受容体の作用についてはこれまで殆ど検討されていなかった。MSCによる脳保護効果をより増強できれば治療効果がさらにきたいされる。これまで我々はAT_2受容体による神経分化促進効果を報告してきたが、今回MSCにおける脳梗塞の細胞治療に与えるAT_2受容体の影響について検討した。マウスの脳虚血再還流モデルに野生型のMSCを尾静脈から投与すると、48時間後の梗塞巣の縮小効果や脳浮腫の改善効果、ならびに脳内のTNF-αやMCP-1などの炎症性サイトカインの低下が認められた。また野生型MSC投与により非投与群に比べ梗塞1週間後の生存率が著しく改善した(50%→80%)。しかし、AT_2受容体欠損マウスから抽出したMSCを投与すると野生型由来の細胞投与で認められた脳内の炎症抑制効果が消失し、脳梗塞巣や脳浮腫の減弱効果は認められず細胞治療の効果が消失し、脳梗塞後の生存率はむしろ悪化した(50%→20%)。また、AT_2受容体欠損マウス由来MSCを投与した群では中大脳動脈閉塞側とは反対の非梗塞側でも炎症性サイトカインが増加していた。しかし、AT_2受容体欠損マウス由来MSCをあらかじめアンジオテンシンII受容体プロッカー(ARB)のバルサルタンで24時間培養した後に投与すると脳保護効果が認められた。また、GFPマウスから抽出したMSCを投与することによりMSCの脳内のホーミングを検討した結果、GFP陽性のMSC由来の細胞は脳梗塞巣および梗塞周囲のペナンブラでは殆ど認められず、MSCは流血中で主に増殖因子や神経保護因子などのサイトカインカクテルを放出して脳保護効果を来したと考えられた。こうしたことから、AT_2受容体シグナルは脳梗塞後のMSCによる細胞治療効果に影響し、AT_1受容体も含めて両者の効果的な制御が細胞治療の効率を増強できる可能性が示唆された。今後、ARBを用いた細胞治療への応用を進める予定である。
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Research Products
(13 results)