2008 Fiscal Year Annual Research Report
修復不能な肩腱板断裂の新たな手術法の開発:骨頭上方移動を制御する肩関節包再建術
Project/Area Number |
19791048
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
三幡 輝久 Osaka Medical College, 医学部, 助教 (30425053)
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Keywords | 肩 / 腱板断裂 / 修復不能 / 関節包再建術 / 上方移動 |
Research Abstract |
目的 腱板断裂によって上方への安定性が損なわれると、肩峰下インピンジメントによる肩の痛みや挙上制限が起こる。我々は修復因難な腱板断裂に対する新しい治療法として肩上方関節包再建術を考案した。腱板が修復不能な場合には深部の上方関節包も欠損している。また関節包は肩甲上腕関節の安定化に寄与するため、腱板修復不能であっても肩上方関節包を再建することにより上方への安定性を獲得できると考えた。本研究の目的は修復不能な腱板断裂に対する肩上方関節包再建術の効果を生体力学的に検討することである。 対象と方法 新鮮凍結屍体8肩関節を肩実験装置に設置して実験を行った。肩上方動揺性(Microscribe)と、肩峰下面と上腕骨頭・大結節との接触圧(Tekscan)を0、45、90度肩外転位で計測した。初期状態として棘上筋10N、棘下筋/小円筋10N、肩甲下筋10N、三角筋40N、大胸筋20N、広背筋20Nの負荷を加え、骨頭を求心位とした。計測時には三角筋負荷を80Nと増大させ、さらに大胸筋と広背筋の負荷を取り除くことにより骨頭に対する上方への負荷を増大させた。計測は(1)棘上筋腱が正常な状態、(2)修復不能な棘上筋腱断裂をシミュレートして棘上筋腱と上方関節包を大結節から肩甲骨関節窩直上まで完全に切除した状態、(3)棘上筋腱断裂に対して大腿筋膜移植(大結節と棘上筋断端に縫合)した状態、(4)上方関節包欠損に対して大腿筋膜移植(大結節と肩甲骨関節窩上部に縫合)した状態(肩上方関節包再建術)で行った。 結果 棘上筋腱を切除することにより上方動揺性と肩峰下接触圧は統計学的有意に増大した(p<0.05)。棘上筋腱に大腿筋膜移植を行うことで肩峰下接触圧は正常な状態に回復したが、上方動揺性の増加は残存した。上方関節包に大腿筋膜移植を行うことにより上方動揺性と肩峰下接触圧はともに正常な状態に回復した。 考察 修復不能な腱板断裂に対して肩上方関節包再建術を行うことにより上方安定性が回復することが生体力学的に証明された。部分修復術と併用することで手術成績の向上が期待できる。
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