Research Abstract |
癌の治療耐性は,克服すべき臨床的重要課題のひとっである.癌の抗癌剤や放射線に対する感受性の増大は,治療耐性を克服し担癌患者の生命予後を改善するのみならず,抗癌剤使用量や放射線照射量の減量による副作用の軽減をも可能にする.ヒートショックプロテイン90(Hsp90)は癌の治療耐性を規定する様々な蛋白の発現と機能を担保するため,Hsp90阻害剤はanti-apoptoticシグナルに関わるクライエント癌原蛋白群の阻害作用により,従来癌治療との併用で更なる抗癌作用を発揮すると予想される. 浸潤性膀胱癌に対して化学放射線療法の後に根治的切除術を施行された35例の化学放射線療法前の腫瘍組織のp53, survivin, erbB2, NFkBの発現解析を行い,各蛋白発現と化学放射線療法治療効果との関連をロジスティック回帰分析で解析した結果,erbB2とNFkBの発現が治療耐性と有意に関連することを見出した.細胞毒性を示さない低用量のHsp90阻害剤は,これら治療耐性関連蛋白の発現と機能吏抑制し,治療抵抗性膀胱癌細胞の化学放射線療法治療耐性克服を可能とした.治療感受性増大の背景には,化学放射線療法によるアポトーシスの誘導作用があることが判明した.低用量Hsp90阻害剤による治療耐性膀胱癌の化学放射線治療耐性克服効果は,マウス担腫瘍モデルにおいても確認された.Hsp90阻害剤は,正常尿路上皮細胞に対しては,癌細胞にみられた強い治療増感効果を示さなかったことから,その増感作用は癌細胞選択的であることが示唆された. Hsp90阻害剤は現在欧米で第2相臨床試験が行われている.本薬剤の低用量での併用により,浸潤性膀胱癌の治療成績の向上,ひいては生命予後およびQOLの改善に繋がるものと期待される.
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