Research Abstract |
近年のマウスガードの使用法として,顎口腔の外傷の予防・軽減を目的以外に,ウエイトトレーニング(レジスタンストレーニング)においてMGを好んで使用しているアスリートが多くみられる。しかしながら,その好まれる理由は明らかにされていない.そこで,平成21年度はヒトが実際行う競技に注目して,ウエイトリフティングおよびゴルフインパクト時の,筋力を発揮した場合の咀嚼筋筋活動様相を調査した。咀嚼筋の筋活動量計測にはマルチテレメータシステムを使用した。ウエイトリフティングはバーベルの位置により6ステージ,ゴルフスイングは5ステージに分けて,側頭筋,咬筋,顎二腹筋の咀嚼筋筋活動を分析した。また,コントロールは随意的最大噛みしめと開口抵抗時の筋活動量とした。結果,スナッチ競技における筋活動量は,最も体幹の筋力を発揮した場合に側頭筋,咬筋,顎二腹筋は随意的最大筋力に対して,それぞれ41.4,39.1,101.2%であった。ゴルフスイングにおけるボールインパクト時では同様に26.2,31.0,101.6%であった。これらのことから,体幹の筋力発揮時,下顎の頭蓋への固定が咀嚼筋によって行われ,顎二腹筋が強く関与していることが示唆された。言い換えれば,嵌合位で強く噛みしめしていないことが明かとなった。つまり,下顎は体幹の筋力を発揮するのに都合良い位置に変位し、顎関節または臼歯部のある箇所で固定されているといえる。このことは,これまで筋力を発揮する時にヒトは噛みしめるといわれていた定説と異なる結果であり,今後の研究の発展に大きく影響を与えると思われる。これらの内容をウエイトリフティング(スナッチ)はInternational journal of Sports Dentistry,Vol2,No.1 33-40.2009.にて,ゴルフスイングについては日本スポーツ歯科医学会雑誌にて発表した。
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