Research Abstract |
様々な設置主体に勤務する新卒看護職者90名を対象に,彼らの職業および組織に対する適応の程度と,個人要因(個人属性,当該施設における実習経験,社会的スキル)・組織要因(組織風土)・組織外要因(専門職性)の関係性について,自記式調査票を用いた実証研究を行った。なお,組織外要因である専門職性を測定するために,医師や弁護士,看護職,会社員など,様々な職業に就いている300名を対象とし,専門職性測定尺度を開発した。看護職者の職業的発達を測定する尺度も,設置主体や所在地が異なる病院に所属する看護職者を対象に尺度を開発した。組織への適応を測定する尺度は,事前の検討を行い,因子および項目の信頼性と妥当性を確認した上で,既存の尺度を用いた。組織風土測定尺度,および社会的スキル測定尺度についても,既存の尺度を用いた。 階層的重回帰分析にて,新卒看護職者の職業および組織への適応について検討した結果,就業後の組織への適応と,職業的適応の程度には,主に,新卒看護職者が学生時代までに培われた職業的適応の程度と,新卒看護職者の社会的スキルの高さが関係していることが見出された。組織全体に対する適応についてのみ,当該施設における実習経験の有無が有意傾向にあったが,組織要因である組織風土および組織外要因の専門職性の程度については,統計上,新卒看護職者の組織への適応に関係性は見出されなかった。 新卒看護職者の組織および職業に対する適応には,看護基礎教育や社会的スキルの高さなどの個人要因が関係していることが見出された。新卒看護職者を組織に適応させ,円滑な職業生活を継続していくためには,基礎看護教育や採用試験が重要であるとことが示唆された。
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