2008 Fiscal Year Annual Research Report
液中原子分解能原子間力顕微鏡の多機能化と生体膜研究への応用
Project/Area Number |
19810006
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福間 剛士 Kanazawa University, フロンティアサイエンス機構, 特任准教授 (90452094)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 原子分解能観察 / 生体膜 / 脂質二重層 / ナノバイオサイエンス / ナノテクノロジー / 生物物理学 / 分子分解能観察 |
Research Abstract |
本研究では、溶液中で原子分解能観察が可能な原子間力顕微鏡(AFM)に、溶液の濃度や温度を制御する機能を付け加え、それを使って精密に制御された溶液環境での分子スケール生体膜研究を行うことを目標としている。平成19年度には、AFM観察時に、観察位置を変更することなく溶液を置換できるシステムを完成させた。さらに、本年度は、この溶液置換システムを電動で制御可能とし、溶液置換の速度や時間を精密に制御できるようにした。また、温度制御に関しては、溶液だけではなく装置全体を銅製の断熱容器で囲み加熱するシステムを開発した。これにより、温度を変化させたときの装置内部の温度分布を1度以下に収めることに成功した。また、開発した装置を用いて、モデル生体膜の分子スケール構造観察を行った。代表的な脂質分子であるDPPC(dipalmitoylphosphatidylcholine)分子の二重層をベースとして、それにコレステロールを含有させたモデル生体膜をマイカ基板上に作製した。その構造を開発した装置を用いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS溶液)中で観察した。その結果、コレステロールのDPPC分子間への挿入により、DPPC分子の配列に不規則性や欠陥が増加することがわかった。また、DPPCのみのモデル生体膜が擬六方の2次元結晶構造を有しているのに対し、コレステロールが30%以上混入されると、それが斜方晶の2次元結晶構造へと変化することが新たにわかった。このような分子スケールの異種分子複合体の形成やその構造は、膜輸送や膜内の分子拡散、さらにはラフト構造形成に深く関与しているとされ、これまで盛んに研究が行われてきたが、分子スケールでその複合体構造を直接観察した例はこれまでになく、この分野における大きな進展が得られた。
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