2007 Fiscal Year Annual Research Report
1920年代日独プロレタリア革命童話の比較および受容研究
Project/Area Number |
19820010
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 文彦 Kanazawa University, 外国語教育研究センター, 准教授 (30452098)
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Keywords | ドイツ文学 / 比較文学 / 児童文学 / プロレタリア革命文学 / 日本:ドイツ:オーストリア / 両大戦間期 |
Research Abstract |
本年度は1920年代にドイツ本国で活躍し,同時代の日本でも広く受容されたプロレタリア革命童話作家ヘルミュニア・ツア・ミューレンの作品の精読と,その社会的および政治的位置づけの確定作業に集中した。具体的には,両大戦間期ドイツ(ワイマル・ベルリン)の政治状況や芸術文化に関する先行研究を整理し、さらにはツア・ミューレンと彼女の出版者らとの書簡集をもとに社会学的考察を行った。その結果,プロレタリア革命文学のみならず,このジャンルの童話挿絵画家も含めた後期表現主義,あるいは20世紀都市のモダニズム文学など,この時代を特徴づける芸術文化運動の国際性が明らかにされた。ツア・ミューレンのプロレタリア革命童話もこういった時代の潮流の中に位置づけられるべきであり,それは当時,童話の創作と並んで彼女の主たる文学活動であった翻訳が,ロシア文学からだけでなく,アメリカ(大衆)文学からも数多く行われていた事実にも,象徴的に表れている。今後はツア・ミューレンのプロレタリア革命童話の国際的受容例のひとつとして,日本におけるそれを分析する予定である。 なお,研究実施計画にも記した通り,補助金の交付決定から半年しが時間がなかった本年度は,研究の成果を発表できる段階には至らなかった。しかし,購入の困難な文献の収集(複写)のために行った調査旅行では,ジグルト・パウル・シャイヒル(インスブルック大学教授),ウルズラ・ゼーバー(オーストリア文学館亡命図書部門長),上野陽子(元大阪府立国際児童文学館専門員)の各氏から本研究の遂行にとって貴重な助言をいただいた。
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