2008 Fiscal Year Annual Research Report
1920年代日独プロレタリア革命童話の比較および受容研究
Project/Area Number |
19820010
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 文彦 Kanazawa University, 外国語教育研究センター, 准教授 (30452098)
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Keywords | ドイツ文学 / 比較文学 / 児童文学 / プロレタリア革命文学 / 日本:ドイツ:オーストリア / 両大戦間期 / パロディ文学 |
Research Abstract |
本年度の研究は、1920年代ドイツのプロレタリア革命童話について、とりわけヘルミュニア・ツア・ミューレンの作品を中心に、当時のわが国における受容状況の調査を中心に行われた。具体的には、彼女の作品の日本語訳やそれに対する批評、さらには彼女の影響下に書かれた当時の日本のプロレタリア革命童話を収集し、それらを精読・分析した後、両者の影響関係について比較研究を行った。 その際、まず注目したのは、ツア・ミューレンをわが国に紹介した文学者や芸術家(具体的には巌谷小波と村山知義)のベルリン滞在歴である。20世紀初頭の都市ベルリンを実体験した彼らが帰国後、(程度の差はあれ)ツア・ミューレンについて日本語で書いた事実の分析から、本研究ではツア・ミューレンを狭義の左翼文学としてではなく、もっと広範な芸術文化運動(後期表現主義やダダイズム)の一部として受容されていたものと結論付けた。 次いで本研究は、ツア・ミューレンの作品および日本のプロレタリア革命童話に見られる文学伝統の再利用について、その傾向の比較研究に取り組んだ。その結果、日独プロレタリア革命童話の今後の読みの可能性として、先行する「国民童話」のパロディ、あるいは「国民」文学史の伝統の継承と刷新を試みた20世紀都市モダニズム文学の一種として位置付けられることを指摘した。 以上の研究成果は、アジア・ゲルマニスト会議および日本独文学会秋季研究発表会の場で、ドイツ語と日本語で口頭発表された。金沢大学外国語教育研究センター発行「言語文化論叢」に学術論文として掲載された。なお、アジア・ゲルマニスト会議の記録が今後まとめられる際には、本研究の成果も掲載される予定であるが、確定はしていないので次頁の「11.研究発表」には記していない。
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Research Products
(3 results)