2007 Fiscal Year Annual Research Report
懐徳堂の「知」の生産-儒学を中心とした知識人の繋がり
Project/Area Number |
19820013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 光子 Osaka University, 文学研究科, 助教 (10452400)
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Keywords | 中国哲学 / 近世儒学 / 中井履軒 / 日本思想史 / 懐徳堂 / 儒医 / 近世大坂 |
Research Abstract |
本研究は、「思想研究」と「資料研究」との二つに分けて進めている。各々における本年度の研究成果・進捗状況は以下のとおりである。 《資料研究》 本年度は、資料研究を中心に研究を進めた。懐徳堂文庫が所蔵している未調査資料(第二次新田文庫)の目録を作成するため、関連情報の収集と整理とを行った。作業に着手した初期の段階で、これらの未調査資料に関わる新資料(西村天囚関連書簡)の提供を受けた。提供された資料は、懐徳堂という学問所の歴史を探る上で重要となる資料であった。資料の劣化を防ぐことが優先されたため、保存環境の整備(中性紙保存箱の設置等)と資料の番号付けなど、保存・整理を行った。以上の資料群については、目録の作成と内容報告のほか、画像の公開も視野に入れているため、撮影作業も並行して進めている。 《思想研究》 懐徳堂の中井履軒が記した自然科学の分野に関する著作に着目し、本年度の研究を進めた。研究の中心としたのは、医学(東洋医学)に関する著作(『老婆心』『越俎弄筆』)である。近世中〜末期は、儒学者を主とした知識人達が、儒学と医学とを、それぞれどのように位置づけるかが一つの論点となっていた。鴻儒と称された履軒の、この問題に対する姿勢を明らかにすることは、懐徳堂学問の特徴だけではなく、近世儒学史の思想的特徴の一部を解明することにも繋がることである。現在までの研究では、履軒が医学を受容しており、その受容する姿勢と経書解釈に見られる性論とが密接に関連していることを明らかにした。この結果を基とし、次年度は懐徳堂の先賢だけではなく、履軒とほぼ同時期に活躍し、「儒医」問題を論じた伊藤仁斎や香川修徳の経書解釈書等にも検討を加え、「医」を通じた当時の儒学思想の特徴について、研究を進める予定である。
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