2007 Fiscal Year Annual Research Report
16-17世紀イエズス会倫理思想と日本布教との相関関係に関する実証的研究
Project/Area Number |
19820028
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
折井 善果 Nihon University, 商学部, 講師 (80453869)
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Keywords | 日欧交渉史 / 比較思想 / 比較宗教 / キリシタン / イエスズ会 / キリスト教史 / 地域交流史 / 倫理思想史 |
Research Abstract |
まず、「研究実施計画」に掲げた、16-17世紀日欧思想交渉史の思想的側面における二方向の研究対象、すなわち「徳川初期日本倫理思想の確立にキリスト教との接触が与えた影響」と、「ヨーロッパ近代思想の創生に日本との交流あるいは思想対決が与えた影響」のうち、本年度は、前者の研究に力点が置かれたことを指摘しなければならない。研究を進める過程で、スペインにおける日本学研究者の協力を得、徳川初期日本思想についてのシンポジウム発表、および論文執筆の機会があり、本研究をそれに合致させるかたちで遂行することが有効と考えたからである。 研究内容は、原稿受理済みの論文としてまとめたが、当該年度中の出版が実現されず、継続年である2008年度の出版となる。そこでは、近世初期日本のキリスト教を、同時代の日本思想にとっての"Objetivizador(客体化するもの)"と名づけ、徳川初期日本倫理思想が確立され自己意識化されていったのは、イエズス会士がもたらしたキリスト教修徳思想(Ascetismo)との邂逅・対決・排除によるところが大きいという事実を、キリシタン信仰書・排耶書(反キリスト教書)・仮名草紙の語彙分析を通じて指摘した。このことは、歴史分析における地域交流史的視点の有効性を主張するS.スブラフマニアムの「接続された歴史Connected History」の理論を補強する結果となった。 本年度取り組むべきであった「ヨーロッパ近代思想の創生に日本との思想対決が与えた影響」についての研究は、方法論の模索と資料収集のみに留まる。しかし、キリシタン信仰書・教理書とその欧文原典(西・葡・羅)との比較分析によって、イエズス会宣教師のもたらしたカトリック=キリスト教の強調点・削除点のあり方を探るという方法はこの課題にとって有効と思われる。そのために必要な文献学的調査は2008年3月の渡欧時に行った。入手した刊本の比較分析作業から今年度の研究を始めていきたい。
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Research Products
(1 results)