2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19820039
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
杉山 典子 (新沢 典子) Tsurumi University, 講師 (60454162)
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Keywords | 古代和歌 / 表記法 / 万葉集 / 大伴家持 / 古今和歌六帖 |
Research Abstract |
大伴家持の作歌には、訓字仮名交じりと万葉仮名表記が併用されており、その使い分けの実態は十分明らかとなっていない。今年度の研究成果「家持歌の手法-眺矚春苑桃李花二首をめぐって-」(万葉学会全国大会於大阪市立大2007.10)では、万葉集巻一九巻頭歌に、助字を省くことで格関係が曖昧となるという、訓字表記特有の機能を逆手にとって、一語に二重の意味を持たせる手法が見られることを明らかにした(研究計画「19年度前期1」に該当)。一語に複数の意味を埋め込むような視覚的技法は、平仮名文ゆえの特徴と考えられがちだが、奈良期の訓字仮名交じり文において、すでに確認されるのであった。かかる技法の存在は、表記史のみならず、和歌史にも特記すべき重要な事柄といえる。引き続き、こうした表現法や表記法と、特に助辞の用法に自覚的であった家持の文法意識との関わりについて調査を進める予定である(研究計画「19年度前期2」に関連)。 また、上記のような複線的な意味をもつ万葉歌が、平安期以降にどのように受容され、仮名書きされているかを調べる過程で(研究計画「19年度後期1」に該当)、古今和歌六帖に、万葉集の和歌本文ではなく異伝を反映するものが偏って存することに気づき、研究成果「古今和歌六帖と万葉集の異伝」(日本文学vol.57 2008.1)にて発表した。そこでは、平安期の万葉集が、部分的にではあるが、現存のものとは異なっていた可能性を指摘している。
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Research Products
(2 results)