2008 Fiscal Year Annual Research Report
辺境地域におけるNIMBY施設の受容をめぐる構造的問題の析出と合意形成の適正化
Project/Area Number |
19830077
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
熊本 博之 Waseda University, 文学学術院, 助手 (80454007)
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Keywords | 社会学 / 地域社会学 / 環境社会学 / 迷惑施設建設問題 / 米軍基地問題 / 高レベル核廃棄物処分場問題 |
Research Abstract |
本年度は、沖縄県、特に名護市辺野古区でのフィールドワークに焦点を絞った調査を実施した。調査の目的は、辺野古区が毎年受領している軍用地料の管理の実態の確認、海兵隊基地キャンプ・シュワブ受け入れ時の実態の確認である。 調査は2008年7月15日から20日にかけて、および2009年3月8日から15日にかけて実施された。その結果、まず軍用地料の管理実態については、辺野古は軍用地料の財産管理団体を設置しておらず、地料は辺野古区に直接支払われていること、地料の管理は行政委員会によってなされていること、会計結果は年に1回開催される区民大会で報告されることがわかった。比較のために嘉手納町と金武町の軍用地料収入のある行政区でも調査を行ったが、いずれも区とは別に財産管理団体を設けていた。前年度の調査で、辺野古行政委員会は先祖代々辺野古に居住している旧住民が大多数を占めていることが明らかになっていたが、その背景には、年間2億円にもおよぶ多額の軍用地料収入の元となっている山林が、旧住民の先祖が長い年月をかけて買い取った入会地であるという事情があることが調査の過程で明らかになった。財産管理団体を設定していない辺野古区は、この入会地に対して支払われる軍用地料を管理するために、行政委員会を旧住民がコントロールできるようにしておく必要性があったのである。 シュワブ受け入れ時の実態については、生活が苦しい中、少しでも地域に利益がある形での受け入れにするための苦渋の決断であったこと、決断したのは地域の有力者であったことが聞き取りから確認できた。これについては当時の『琉球新報』の記事(沖縄県公文書館蔵)からも確認できている。 このように辺野古は、やむを得ない選択ではあったが、シュワブを受け入れたことによって、現在もシュワブに大きく依存しており、それゆえに普天間代替施設も拒絶できずにいることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)