Research Abstract |
脳内のAβ沈着と知能障害が表現できるADモデルマウスであるTg2576APP Swedish miceに,生後6ヶ月目より試験管内にて抗アミロイド効果を認め,アルツハイマー病の治療薬の候補として期待されている赤ワインポリフェノールのケルセチンを0.5%含んだ餌を投与した(予防群)。また別の群では,生後12ヶ月齢より0.5%ケルセチンの投与を開始した(治療群)。生後12ヶ月目の体重は,対照群22.3±1.5g,治療群24.6±3.1g,予防群25.0±2.5gと予防群は対照群と比較して体重が有意に重かった。治療群と対照群に差は無かった。Y-mazeを用いた行動実験では,12ヶ月目では,運動機能を示すarm entryが対照群20.2±7.5,治療群26.1±11.7,予防群25.5±19.3で,認知機能を示すpercent alterationは対照群49.5±20.3,治療群51.8±10.8,予防群54.0±11.5と何れも有意差を認めていない。また,累積生存率についても,各群間に有意差を認めず,ケルセチン投与による生命予後や運動機能および認知機能に対する影響は無いものと考えられる。今後,更に長期投与によって,ケルセチンのアルツハイマー病モデルマウスへの認知機能等について評価し,18ヶ月齢に絶命し,脳の病理学的検討にて,各群のアミロイドβ蛋白の蓄積を評価し,ケルセチンによるアルツハイマー病治療の可能性を検討する予定である。本研究でモデルマウスにてケルセチンによるアルツハイマー病改善効果が確認されれば,今後ヒトへの投与を考える予定としている。
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