2019 Fiscal Year Annual Research Report
国立大学における運営費交付金と寄附金の実証分析 -クラウディング・インの検証-
Project/Area Number |
19H00024
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Principal Investigator |
中島 剛 大阪大学, その他部局等, 主任
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | 運営費交付金 / 寄附金 / クラウディング・イン |
Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 国立大学に対する政府拠出の総額は厳しい財政状況の中でも増加している。しかし、国立大学の使命である「教育・研究・社会貢献」を支える運営費交付金については、減少傾向が続いてきた。そのため、必要な人件費や基盤的経費が確保できず、近年では、論文生産数の減少等の国立大学における機能低下が指摘されている。先行研究においても、競争的資金等の獲得により、大学の収入総額は増加傾向にあるものの、これは特定研究者に偏在した資金であり、大学全体の基盤的条件維持に使用可能なものではないと指摘されている。そのような状況下では、運営費交付金の補完的財源として、寄附金等の民間拠出の財源を増加させ、基盤的経費に充当する必要がある。 高等教育機関における政府支出と民間寄附の実証分析については、海外での先行研究は存在するが、日本での研究は見当たらない。日本の高等教育機関を対象にした本研究は大変意義深い。 本研究では、国立大学法人の財務諸表を用いてパネルデータを作成し、同法人に対する運営費交付金が寄附金をクラウディング・インするかの検証を行った。国立大学法人全体で推計すると、同効果が相殺されてしまう可能性があるため、国立大学法人の類型毎に推計を実施した。 ○研究方法 本研究は、第二期中期目標期間を主な分析対象とし、全86国立大学法人の財務諸表データを用いてパネルデータを作成し、仮説の検証を行った。推定方法としては、pooled OLS、変量効果モデル、固定効果モデルを用いた。 ○研究成果 推計の結果、大規模大学、中規模病院有大学、医科大学、理工系中心大学でクラウディング・イン効果が確認された。これは海外での先行研究の結果と整合的であり、日本においても、実験色の強い大学に対する政府支出は、民間寄附を引き寄せることが分かった。
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