2019 Fiscal Year Annual Research Report
社会に向き合うための資質・能力を育むためのロールプレイ教材の開発とその検証
Project/Area Number |
19H00076
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Principal Investigator |
井上 優輝 広島大学, 附属中学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | ロールプレイ / 問題の真正性 / 社会的オープンエンド |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究の概要 本研究では, 数学教育における教材開発の幅を拡げることを目的とし, 従来から教科書等で扱われる文章題より真正な問題としてのロールプレイ教材の可能性を検証した。とりわけ, Skovsmose氏が提唱する批判的数学教育の文脈で求められる「社会的具体性」(Skovsmose, 1994)の今日的な解釈とも言える「問題文脈の真正性(authenticity)」に着目し研究を進めた。中学校3年生を対象としたロールプレイ教材「ピザの値段を決定しよう」を開発し, アンケート分析を行った。分析の際には, ロール(役割)を設定することで生徒の思考にどのような変化が生じるのか, 与えられたロールにより生徒の思考内容や生徒に与える現実感に違いがあるかに注目した。 2. 開発教材について 「直径36cmのピザを3,600円で販売している店がある。直径49cmのピザは何円で販売するとよいか。」という問題を源問題とし, この問題に社会的な文脈を加えた上でロールを設定した。ロールは, ピザ好きの青年・開発チーム主任・創業者会長・社長・悪徳専務の5種類で生徒はいずれか1つのロールを担当する。 3. 開発教材の分析 広告や価格表示の仕方など, 数学的な考察(面積比による考察など)を超えた自由度の高い議論が各グループで行われた。アンケートでは考察の際に意識したこととして「単純な計算だけで答えを終わらせないこと」という記述がなされるなど, 生徒たちが本教材を社会的オープンエンドな問題(島田・馬場, 2014)として扱っていたことが散見され, ロールプレイ教材を数学科授業で扱う価値を見いだすことができた。一方で, 担当するロールによって根本的な思考の方向性が変化するかどうか, 生徒に与える現実感に違いが生じるかどうかについては, 課題を残した。
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