2019 Fiscal Year Annual Research Report
測定器としての機能を活用したスマートフォン物理実験とその授業展開
Project/Area Number |
19H00218
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Principal Investigator |
今和泉 卓也 筑波大学, 附属駒場中・高等学校, 教諭
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | スマートフォン / マイコン / 理数探究 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】教育ICT機器は情報共有が簡便という理由で用いられることが多いが、物理科としてはスマートフォン(スマホ)やマイコンの測定機器としての性質に注目したい。以前なら労力や費用面から演示実験で済ませていたものが、気軽に生徒実験として実現できる時代になったが、この機器を積極的に用いる例は少ない。この種の実験を開発、実践し、中等教育の物理実験をより現代化し、学習効果を更に高めたい。 【方法】大きく2つに分けて進めた。「1. スマホを測定器として用いた生徒実験の実践」と「2. マイコンを用いた課題研究の開発」。 1. 「斜方投射/エアホッケーの衝突のスロー動画解析」(これまで扱いにくかった2次元運動を直接かつ簡便に実験できるという点で独自性が高い)など10種以上の自ら開発した実験を実践し、力学概念調査等で効果を測定した。 2. 安価なマイコンとセンサ、ネット環境を交えた装置を開発する課題研究を行った。ネット関係に詳しい民間の方を講師に招き、IoT技術との連携も深まるようにした。生徒1人1人に課題を設定させ、装置製作、成果物紹介動画作成までを行わせた。 【結果】 1. 力学概念調査プレテストでは「作用反作用の法則」に関する理解に難があったが、開発した実験を取り入れた授業を展開し、ポストテストを行ったところ「より大きな質量が大きな力を与える」という誤概念を持つ生徒が33%から5%に改善された。力学全体としてもゲインは0.53で、一般的な大学初年度と比べても高い。実験を多く取り入れた授業の方が高ゲインという他報告と合致する結果で、特にスマホを用いた2次元運動解析実験は、作用反作用の理解に大いに貢献するものであると考えられる。 2. 選択希望生徒は全体の55%だった。IoT技術とも密接で民間と連携できる。1人でも開発を進められ、時間的空間的制約が少ないのもよかった。想像以上に生徒が自主的に取り組んだ。今後、GIGAスクールや理数探究を考える上で有用だった。
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