2019 Fiscal Year Annual Research Report
薬物事件で使用された睡眠薬を製薬会社まで特定するための手法開発
Project/Area Number |
19H00336
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Research Institution | 愛知県警察本部刑事部 |
Principal Investigator |
鈴木 信明 愛知県警察本部刑事部, 警察職員
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | 医薬品添加物 / 睡眠薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、睡眠薬が混入された飲み物等から睡眠薬の有効成分だけでなく、医薬品添加物まで分析することで、睡眠薬を製薬会社まで特定する分析手法の開発を試みた。睡眠薬は、広く国内で使用されており、ジェネリック医薬品を含め計16社から製造販売されているエチゾラム錠を対象とした。 はじめに、16社のエチゾラム錠について、添付文書に記載されている医薬品添加物を分析し、その組み合わせからそれぞれ製薬会社を特定できるかについて検討した。分析手法としては、それぞれを粉末化し、有機溶媒抽出、続いて水抽出を行い、水抽出残渣を含め3画分に分けた。そして、これらの画分に対して、糖の分析、デンプンの観察、無機物の分析及びセルロース誘導体の分析を行った。その結果、16社の錠剤の内、14社を特定することができた。残る2社については、その後の調査で、2社が共同でエチゾラム錠の開発・承認申請を行っており、錠剤の成分が全く同一で区別不能であることも判明した。 次に、実証実験として研究者が盲検下に、研究協力者が16社のエチゾラム錠をそれぞれ粉末化したものの中から無作為に選択し、(1)そのままの粉末、(2)水に加えたもの、(3)オレンジジュース等の飲料に加えたものを用意した。これらについて、上記の分析手法を用いて、どの製薬会社のエチゾラム錠かを特定できるかについて検討した。その結果、(1)及び(2)については、問題なく特定できた。一方で、(3)については、飲料自体が大量の糖を含んでいたため、有機溶媒で抽出される予定であったセルロース誘導体を検出できず、判定を誤ってしまうケースが認められた。 以上から、粉末化した睡眠薬及び水に加えた睡眠薬については、医薬品添加物を分析することで製薬会社まで特定することができた。今後は、オレンジジュース等の大量に糖を含む飲料に対しても、睡眠薬を特定できるような新たな手法の開発を目指す。
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