Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療用口腔装置(以下, OA)は, 頭頸部領域における放射線治療時に, 照射精度を上げる目的で, しばしば使用される. OAの製作材料には, 金属酸化物を含有するものがあり, 散乱線を生じる原因となる可能性がある. また, 無歯顎患者用OAは大型化するため, 線量吸収の増加が考えられる. そこで, 我々は実験用OAを製作し, OA製作材料の金属酸化物含有の有無やOAの構造が口腔の放射線線量分布に与える影響を検証した. 実験用OAとして, 4つのOAを製作した. 具体的には, [○!A]金属酸化物含有レジン非中空型(①歯冠色, ②歯肉色), [○!B]金属酸化物非含有レジン非中空型(無色), [○!C]ポリエチレンテレフタレート中空型(無色)を準備した. X線CT装置を用いて, 4つのOAおよび参考値として空気のHU値(CT値)を測定し, 治療計画装置にてシミュレーションを行った後, リニアックを使用し, 電離箱線量計によって[○!A](①, ②), [○!B], [○!C], 空気の透過線量を計測した. 透過線量計測においては, 水の透過線量を基準として, [○!A](①, ②), [○!B], [○!C]を電離箱線量計に挿入した場合および空気の透過線量との差異を算出した. OA製作材料について : [○!A](①, ②), [○!B]をリニアックで透過線量計測した結果, [○!A]-①, [○!A]-②, [○!B]いずれも2.2%と, レジン中に含まれる金属酸化物含有の有無で有意差を認めなかった. 以上から, OAの製作においては, いずれのレジンを使用しても線量分布の差がないことが示された. OA構造について : [○!B], [○!C]をリニアックで透過線量を計測した結果, 水の透過線量を基準として, 実験用OAを挿入した場合の透過線量との差異は, [○!B]は2.2%, [○!C]は5.7%, 空気は6.8%であった. 空気の透過線量は低く, [○!C]は[○!B]に対して空気に近い数値を示したことから, 無歯顎患者用OAを製作する場合は, 中空構造で製作することが有用であると考えられた.
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