2019 Fiscal Year Annual Research Report
前近代ユーラシア世界における広域諸帝国の総合的研究:移動する軍事力と政治社会
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19H00535
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 清彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80379213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 和裕 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (70274404)
真下 裕之 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70303899)
前田 弘毅 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90374701)
舩田 善之 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (50404041)
柳谷 あゆみ 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (90450220)
山下 将司 日本女子大学, 文学部, 准教授 (50329025)
鈴木 宏節 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (10609374)
伊藤 一馬 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (90803164)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 帝国 / 武人 / ユーラシア / 王権 / 宮廷 / 移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前近代のユーラシア大陸に興亡した帝国を対象として、王権の根幹をなした〈軍事力〉とその担い手の〈移動〉の諸相に注目して、その広域統治・多民族支配のメカニズムを横断的・動態的に解明しようとするものである。その具体的対象は、9~10世紀前後のアッバース・突厥・唐(第一期)、12~13世紀前後のセルジューク系諸王朝・モンゴル・宋(第二期)、16~17世紀前後のサファヴィー・ムガル・大清(第三期)という、3つの時期と9つの国家群であり、これまで第一期と第三期について実証と比較を進めてきたが、本研究において第二期の3国家群を加えることで、視座の拡大と新たな論点の発見が期待された。 そこで初年度の本年度は、第一に、本研究に結集したメンバーの現時点での実証成果を提示するとともに、本研究の方向性について提言・討論を行なうことを目的として、4月にメトロポリタン史学会第15回大会(首都大学東京)で「世界史の中の武人──越境と帝国秩序──」と題して公開シンポジウムを同学会と共催で開催し、前田が趣旨説明、真下・山下が研究報告、杉山がコメントを行なった。この内容は同学会誌『メトロポリタン史学』第15号に特集・論文としてまとめられ、アジア史のみならずヨーロッパ史・日本史にも跨る成果となった。第二に、本研究は多様な時代・地域にわたる横断的な共同研究であるので、メンバー間での個別研究成果の提供・吸収と相互比較を重視している。そこで定例研究会において、メンバー全員が自分野について報告するとともに、第二期の3国家群について実証研究の報告を行ない、知見を共有するとともに論点を深めることができた。 これらの研究活動を通して、ユーラシア各地域において、集団や階層としての武人が、軍事のみならず統治においても重要な役割を果していること、その際の結合契機・統属形態・再生産に特徴を見出せることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、時代と地域を広汎に対象としつつ、3期の時期を設定して立体的に実証・比較を行なうことを企図しているが、初年度において、シンポジウムの開催と特集論文の公刊を通して出発時点での成果と方向性を明確に提示することができ、また研究メンバー内部においても、個別研究を共有・比較することで、他に類例を見ない広汎な分野に跨る共同研究の意義を確認することができた。とりわけ、先行して共同研究を実施してきた第一期・第三期に加え、世界史的に欠かすことのできないモンゴル時代前後に相当する第二期について、柳谷・舩田・伊藤の研究によって、第一期・第三期で見られた特質・状況との共通性や連続・断絶の諸相を見出すことができ、研究の立体化への展望を得ることができた。 これらの研究活動を通して、次年度以降へ向けた課題・論点を明確化することができ、4年間の研究の基盤を構築するとともに見通しを得ることができたと評価しうる。年度末には、中国に端を発し世界に拡散した新型コロナウイルス感染症の蔓延という想定外の事態によって、第3回の定例研究会(九州大学予定)を中止せざるをえなかったが、本年度の研究はすでに所定の計画に則ってほぼ進行済みであり、また研究メンバー全員がそれまでに1回以上報告済みであったため、研究の進捗に大きな支障は生じなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、第2年度は、初年度の成果を受けて、引き続き定例研究会を3回程度開催して各メンバーが新たな研究成果を提出するとともに、中央アジア方面で共同海外現地調査を実施することとしていた。しかしながら、中国に端を発しわが国にも侵入することとなった新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延のため、次年度の海外渡航は断念を余儀なくされ、また国内において物理的に移動・集合する研究会の開催も、慎重に判断せざるを得ない。このため、当初の研究計画は変更しなければならない見込みである。 しかし、本研究は現地に密着した海外調査を必須とする研究ではなく、また各メンバーの個別研究も国内で遂行可能な状況にあるので、個々の研究遂行には大きな支障はない。また定例研究会も、オンラインでも実施しうるので、状況に合せて方法を選びつ開催可能である。このため、共同海外現地調査は見送りつつ、定例研究会を継続的に開催することで、所定の共同研究を遂行する。初年度は、第二期に重点を置いて研究報告を行なったため、次年度は第一期・第三期についての研究報告と比較検討を実施し、研究の深化と立体化を図る。また、海外現地調査に代る共同活動として、準備中の概説論文集『ユーラシア諸帝国の武人たち』の編集・出版を進める。 現時点では4年間の研究計画の初年度を終えた段階であるので、期間全体の研究計画については、次年度の研究を遂行しながら、社会情勢を注視しつつ必要な検討を行なう。ただし、上記の通り、根本的な見直しを要するような影響は被らずに研究遂行可能であると考えている。
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Research Products
(24 results)