2021 Fiscal Year Annual Research Report
A research project to establish a research method for archaeology and ancient history based on collaboration with astronomy
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19H00544
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
北條 芳隆 東海大学, 文学部, 教授 (10243693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 明 南山大学, 人文学部, 教授 (40205589)
関口 和寛 国立天文台, 研究力強化戦略室, 教授 (20280563)
細井 浩志 活水女子大学, 国際文化学部, 教授 (30263990)
瀬川 拓郎 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (30829099)
吉田 二美 産業医科大学, 医学部, 特任助教 (20399306)
辻田 淳一郎 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (50372751)
高田 裕行 国立天文台, 天文情報センター, 専門研究職員 (50465928)
石村 智 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 室長 (60435906)
田中 禎昭 専修大学, 文学部, 教授 (60751659)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 考古天文学 / 過去の天体運行 / 天文民俗 / 星辰信仰 / 天文古記録 / アジアの天文文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も当初計画していた海外調査が困難であったので、後藤はポリネシアの考古天文学の現状と今後の展望を把握するための資料収集と論文執筆を行った。またポリネシアに特有の天文航法と関係の深いカヌーの構造の変化を、海上移動の長さや航海法の進化と関係づける研究を進めた。これら二件を論文として公表した。 関口も同様に海外調査・学会参加が不可能であったため、国内での研究に充当することとし、佐賀県吉野ヶ里遺跡南内郭をarc Astro VR用のデータセットとして組み込む作業に専念した。細井も沖縄県の現地調査を断念し、九州地域内での文献探索と古代の天文記事の蒐集と個別情報の確認を行った。また天文記事が載る『六国史』の性格に関する研究を進めた。 吉田は2009年の世界天文年の際にアジアの星物語の収集を提案したStars of Asia projectの流れの一環として、アジア在住の天文学者から集めた各地の星や宇宙に関する神話や伝説を『Stars of Asia』と題する冊子にまとめた。本冊子に収録した収束した神話・伝説は、寄稿した天文学者自身が小さい頃に聞いた話や、各民族の識者から聞き集めたものである。原稿の収集は英文で行い、その英文をアメリカに住むネイティブスピーカーや日本在住の英文翻訳者に依頼して、英文校正をおこなった。冊子の挿絵は、神話や伝説が生まれた各国・地域のプロ・アマのアーティストに制作してもらった。各国・地域の色彩を失わないように、冊子をフルカラーで作成した。冊子は280ページで、Stars of Asia projectからの発行とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画である南太平洋島嶼部やハワイ諸島、および沖縄地域における考古天文学的な事象に関わる遺跡や遺構の現地調査は相変わらず実現していない。 ただし上述のとおり、日本国内で遂行可能な研究を鋭意進めており、最終年度には日本列島の先史・古代社会における天文文化の様相を具体的に証明する方向性が定まりつつある。とくに文献史学班が担当している天文古記録データベース作成は着実に進展し、『六国史』については完成に近づいている。 さらに天体運行シミュレーションArc Astro-VRの有効性は吉野ヶ里遺跡の南北両内郭を具体例として引き合いに出しつつ証明されたため、本科研費研究は新たな展開へと向かいつつある。こうした成果の一環として、本システムを基礎に据えた映像やプラネタリウムシステムの構築にも目途が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研費研究において、今後重点をおくべきテーマのひとつに月をめぐる問題が浮上した。そのため、考古学・人類学班では調査の対象を古代都城や中世城郭および観月の風を促進したとされる禅宗関連寺院の庭園遺構にたいする考古学的検討の必要性が自覚された。 現在はこの方向に向けた準備を進めており、新たな課題が絞り込まれつつある。さらに能の芸能は月と死生観がテーマであり、文献史学班では能と能舞台の史学的把握をも研究テーマに位置づけている。現在作成中のデータベースを用いた点検作業が可能な環境を整えることを急ぎたい。 過去の天体運行再現シミュレーションArc Astro-VRの有効性については、吉野ヶ里遺跡に限定せず、今後は古代・中世を含めた通時的な適用を目指す。さらに汎世界的に適用可能なシステムであることをアピールする必要もあると考える。そのためにも具体的な祭祀関連遺跡の事例を積極的に組み込むと共に広く社会に公開する必要性を痛感している。データセットとして組み込むべき遺跡は琉球列島を含む日本列島各地をはじめ南太平洋島嶼部にも所在しており、現地観測と測量が可能なところから実現させたいと考えている。
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Research Products
(3 results)