2019 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of International Research for Historical Paper Materials
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19H00549
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渋谷 綾子 東京大学, 史料編纂所, 特任助教 (80593657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 隆二 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (90202978)
高島 晶彦 東京大学, 史料編纂所, 技術専門職員 (10422437)
後藤 真 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90507138)
天野 真志 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60583317)
尾上 陽介 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00242157)
野村 朋弘 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (00568892)
小倉 慈司 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20581101)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際古文書料紙学 / 料紙 / 科学研究方法の国際標準化 / 研究データ共有管理システム / 科学研究コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,1. 料紙の科学研究方法の標準化,2. 科学研究データの共有管理システム構築,3. 研究データ共有管理システムを用いた科学研究コミュニティの形成,という3つを軸とする。料紙研究情報の国際標準化によって,歴史学の情報をより豊かにするとともに,国際的な歴史資料研究の基盤となるしくみを作り上げる。
2019年度は下記を実施した。(1)歴史資料の現況の分析・精査(高島),(2)構成物の種類・量・密度の分析(渋谷),(3)DNA分析による料紙の識別実験・成分特定(石川),(4)既存の研究データと本研究の分析データの情報化(後藤・渋谷),(5)紙媒体歴史資料の修理保存の研究課題洗い出しと資料の長期保存方法の検証(天野),(6)本研究の分析データと古文書の内容・様式との対応関係を比較・検証(野村・尾上・小倉)。2019年度初めに各担当者の計画を確認した後それぞれ研究活動を実施し,随時,各自の進捗状況と成果を共有した。
研究成果は,日本文化財科学会第36回大会(2019年6月)や第34回日本植生史学会大会(2019年12月),国際古民族植物学会議第18回大会(イタリア,2019年6月)など国内外の学会で報告するとともに,国際シンポジウムを2019年11月に実施した。この国際シンポジウムの講演者・報告者の論考は,『古文書研究』第90号(2020年12月)に掲載された。さらに,研究協力者の所属機関である台湾・中央研究院とは今後,植物材料に関する共同研究を行い,2020年度以降,ワークショップや研究会などを実施する計画を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,本研究の準備段階で確立した科学分析のデータ項目と顕微鏡観察・撮影方法にもとづき,歴史資料の現況の分析・精査と料紙の構成物分析を主体的に進めた。主な対象史料は,公益財団法人陽明文庫所蔵史料,松尾大社所蔵史料,米沢市上杉博物館所蔵「上杉家文書」である。調査・分析の結果として,史料の時期によって填料(添加物)の含有量の増減が確認できる一方,鉱物など植物質以外の物質にはあまり変化が見られないことが解明された。DNA分析では,料紙に利用されるカジノキ類の葉緑体多型の検証を試みるため,現生植物サンプルの収集を進め,DNAマーカー開発,植物系統間の識別の現状について検討を行った。結果,アカソとアオソ,カナメとナス,タオリという3つの分類群が確認されただけでなく,次世代ゲノム配列を利用した核情報の解析により,核における多様性を検出することに成功した。さらに,変異箇所を標的とした新たな核マーカーを開発することができた。このマーカーによる他の在来種を含めた個体間の識別について,2020年度以降も検討を進めている。
これらの2019年度成果は,国内外の学会・研究会や国際シンポジウムでの報告,および学術誌への論文投稿で発信した。
研究データの情報化において,本研究の分析データの情報化は進めてきたが,調査対象史料目録のデータ化など,既存の研究データの情報化は他の研究項目よりも遅れて開始したため,2020年度に持ち越して継続的に進めることとなった。2020年度初めから目録情報のデータ化を進めており,この情報化にあわせて古文書の内容・様式との対応関係を比較・検証する作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降は研究データの情報化を本格的に進めるとともに,歴史資料の調査・構成物分析やDNA分析による料紙の識別実験・成分特定を実施,料紙の科学研究データの蓄積と拡充に努める。分析データの共有化と標準化を実践し,歴史資料の製造地域や武家・公家による相違などの特性と歴史的変遷に関する検討も始める。古文書の内容・様式との関係については,史料調査の範囲を広げる中で検討を進め,他の研究機関の研究者との情報連携を試行する。さらに,研究データ共有管理システム構築に関連した顕微鏡画像管理ツールの開発について,研究協力者とともに着手する。
研究成果については,引き続き国内外の関連学会で報告を行い,査読付き学術雑誌への投稿準備を進める。
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Remarks |
渋谷綾子,野村朋弘,天野真志,後藤真,小倉慈司,尾上陽介,高島晶彦は「researchmap」に研究内容・成果を掲載。
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Research Products
(65 results)