2019 Fiscal Year Annual Research Report
Creation and implementation of scientific basis for children's human capital:Development of policy evaluation process by government-academic collaboration
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19H00602
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野口 晴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90329318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 隆一 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00397704)
川村 顕 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 教授 (10422198)
牛島 光一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80707901)
別所 俊一郎 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (90436741)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子どもの人的資本 / 科学的根拠に基づく政策立案・評価 / 因果推論 / 行政管理情報による大規模パネルデータ / 官学協働による実装 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における今年度の学術面における成果としては、足立区が独自に実施している補習効果に関する研究が2019年6月にJapan and the World Economy(Bessho S, et al. “Evaluating remedial education in elementary schools: Administrative data from a municipality in Japan”)に、2019年12月には、本プロジェクトを基盤とする3本の論文(「子どもについての行政データベースの構築」・「区立小学校での補習の効果:足立区のケース」・「就学援助と学力との関連性について:足立区におけるパネルデータ分析結果から」)が、フィナンシャル・レビュー(財務総合政策研究所、2019年第6号:通巻第141号)に掲載された。また、2019.12.13にSingaporeで開催されたAsian and Australasian Society of Labour Economics 2019 Conferenceにて、 “Estimating Teacher Value-added in Public Primary Schools: Evidence from Administrative Panel Data”(Tanaka R, et al.)が報告され、当該論文は、現在査読専門誌へ投稿準備中である。 実装面における成果としては、こうした学術的な成果について、足立区長・経営改革委員会・教育委員会・学力定着推進課・教育政策課と定期的に情報共有を行い、区政に資するエビデンスについての議論を継続させている。 さらに、分担研究者である別所俊一郎氏が週刊東洋経済(2020年2月15日号)に、本研究に関する記事を掲載する等、メディアでの情報発信にも努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、学力や体力など子どもの人的資本(human capital: 以下、HC)の蓄積過程に焦点を当て、教育現場や自治体における様々な取り組みに対し、因果推論に裏打ちされた政策評価と実装プロセスを組み込み、官学協働による実効性のある「科学的根拠に基づく政策立案(Evidence-Based Policy Making: 以下、EBPM)」の実現することにある。 学術面では、足立区が実施している補習効果や教員・学校の固定効果等、様々な教育現場での取り組みに対し、因果推論を考慮したの分析を行い、当初予定していた国際学会での報告がなされ、更には、国内外の学術誌への複数の論文が掲載された。 実装面でも、足立区長・経営改革委員会・教育委員会・学力定着推進課・教育政策課等行政担当者と、学術面での成果に関する定期的な情報共有を行い、区政に資するエビデンスについての議論を継続させている。以上のことから、学術面・実装面の双方において、概ね予想通りの進捗といえるだろう。 但し、本年度の後半から始めた、長期欠席やいじめ等の新たなテーマに対する解析作業を基盤とした研究の遂行に、20020年度にポストドクター1名を新規雇用する必要性が生じたこと;また、2020年6月にPadova(Italy)で開催されるEuropean Population Conference(EPC)に、当該研究を基盤する研究が採択されたため、今年度1月に参加予定であった全米経済学会への参加を取りやめたこと、以上2点が、今年度の予算執行を若干遅延させてしまい、調整金による次年度使用を生じさせた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度においては、第1に、自治体職員自身によるデータのアップデートと分析を可能とする体制の整備を行う。このように、本研究における「実装」の一環として、引き続き、自治体データのパネル化の整備を継続させる。データ整備に当たっては、2019年度に整備を行ったデータに関するコードブックやガイドライン等を作成するとともに、本プロジェクトメンバーが足立区教育委員会・学力定着推進課の職員に対する研修を行い、職員自らがデータのアップデート、及び、行政上必要な分析を実施可能な体制を構築する。 第2に、今年度においても、「因果推論」に裏打ちされた政策評価による新たな科学的根拠の創出を継続的に行う。本研究がターゲットとしている、(1)児童・生徒個人の学力の伸びに対する学校や教師の寄与度を推定する付加価値モデルの構築;(2)学校選択制の導入による学力・体力・問題行動などに対する同級生効果の検証;(3)予測不可能なインフルエンザの流行による学校閉鎖の学力や体力に対する影響;(4)子どもたちのネットワークから通級の効果やいじめなどの問題行動が発生する負のメカニズムの特定;(5)ファカルティー・ディベロップメント導入の中・長期的効果など、これまで日本では実施が困難であった科学的根拠の創出へ向けて、2019年度において追加的に整備したデータを用いた分析を推進する。 第3に、引き続き国内外での学会発表や国内外の査読雑誌への投稿へ向けての準備を進める。
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Research Products
(7 results)