2021 Fiscal Year Annual Research Report
Optical control of electron-hole correlation in excitonic insulators
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19H00659
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
溝川 貴司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90251397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 英一 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (00273756)
岡崎 浩三 東京大学, 物性研究所, 准教授 (40372528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エキシトニック絶縁体 / 時間分解光電子分光 / 圧力誘起相転移 / 光誘起相転移 / 電子正孔相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍のため時間分解光電子分光実験が制約を受けていた期間を利用して、Ta2NiSe5でのNiサイトのCo置換効果を第一原理バンド計算によって研究し、Co置換の下でもエキシトニック相のバンドギャップが保持される機構を解明した。同様に、SeサイトのS置換効果を研究し、S置換でエキシトニック相のバンドギャップが増大することを示した。 時間分解光電子分光実験については、エキシトニック絶縁体相から半金属相への光誘起転移の励起光強度依存性を詳細に調べた。特にS置換系において、2種類の光誘起相が存在することを発見した。これまで光誘起半金属相と考えられていた状態は実は半導体相であり、さらに励起光強度が高い条件で真の半金属相に転移することが示唆された。光励起後100fsの時間では電子正孔系が非常に高温になっているため、半導体相と半金属相を識別することに注意を要することが判明した。 高圧下赤外分光については、Ta2NiSe5の圧力誘起超伝導相の電子状態を解明することに成功した。さらに、S置換系においてエキシトニック絶縁体相から半金属相への圧力誘起相転移を観測した。 原子層結晶の作製については博士研究員1名が中心となって研究を推進した。剥離法によって10nm程度のTa2NiSe5薄膜の作製したが、それ以上に薄い原子層結晶を作製することは手作業では困難だった。これを解決するためにマイクロプローブを導入し、機械的に原子層結晶を作製するプロセスを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の後半になって、2020年度途中からストップしていた時間分解光電子分光測定を実施することができた。励起光強度を変化させながら、Ta2NiSe5、Co置換系、S置換系での光誘起半金属相を観測し、電子正孔相関の超高速ダイナミクスについて重要な知見が得られた。これにより、時間分解光電子分光による研究の部分については当初の目的を達成し、現時点では実験結果を報告する論文の作成を進めている。 原子層結晶の作製についても博士研究員の活躍によって研究が順調に進捗している。作製した原子層結晶を、光電子分光などの各種測定に提供する準備が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって、第1の目的のうち「半導体相となり電子と正孔の対が結合して発光する領域」について観測を行うことができた。これによって、エキシトニック絶縁体相、半金属相(ラインノード型)、半導体相のすべての解明を目指した研究が完成する。来年度は、これらの研究成果を論文として発表し、時間分解光電子分光による電子状態と相制御の研究を総括する。 圧力下の赤外分光測定については、S置換系の研究を継続する。S置換によってエキシトニック相から半導体相へと変化していく物質群において、圧力誘起半金属相の電子状態を解明する。また、圧力誘起超伝導についても研究を深めて、圧力によるエキシトニック相の制御についての研究を完成させる。 第2の目的である光誘起半金属相での電子正孔相関と超伝導相関の関係については、今年度までの研究で光誘起半金属相がラインノード型半金属であることが分かり、両者の直接的な関係が示唆されている。来年度は、超伝導相関成長の観測に挑戦する計画である。 原子層結晶の開発については、様々な基板上に厚みを変えながら試料を作製してバンド構造を計測するとともに、光誘起相転移の有無を調べる。原子層結晶においてエキシトニック相の光制御が可能であることを示して、新規な光デバイス開発への足掛かりを得ることを目指す。
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Research Products
(5 results)