2020 Fiscal Year Annual Research Report
彗星塵とされてきた宇宙塵は彗星起源なのか?:分析と分光観測からのアプローチ
Project/Area Number |
19H00725
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野口 高明 京都大学, 理学研究科, 教授 (40222195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤谷 渉 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (20755615)
薮田 ひかる 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (30530844)
臼井 文彦 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (30720669)
大坪 貴文 国立天文台, 天文データセンター, 特任研究員 (50377925)
山口 亮 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70321560)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 顕微拡散反射スペクトル / 透過電子顕微鏡 / 南極微隕石 |
Outline of Annual Research Achievements |
顕微拡散反射スペクトルを測定する方法を確立できた。昨年度末にPierre Beck博士に各種の隕石とスペクトラロンをいただき,カンラン石と低Ca輝石の小片,Ti3O4粉末も測定した。微粒子からの拡散反射光は微弱であるため,光源と分光器本体以外の顕微鏡本体を小型暗幕に格納した。分光器CCDの暗電流をバックグラウンドとして引いていたが,それでは不十分で,試料の無い状態で光を入れ測光しバックグラウンドとして引く必要があると判明し,試料はスライドグラス上に載せることもバックグラウンド低減に必要であった。そして,スペクトラロン小片の顕微拡散反射スペクトルをそのバルク反射スペクトルと同形状になるように補正した係数を,試料に適用することで,スペクトル形状は大幅に改善した。さらに数十個の南極微隕石(AMMs)の顕微拡散反射スペクトルを測定できた。5個のAMM sについて透過電子顕微鏡(TEM)分析を行えた。雪を凍結乾燥して回収した微粒子からは,昨年度は4個,今年度は16個のAMMsを発見できた。4個をTEM分析することを試みた。2試料は硫黄包埋作業時になくしたが,2試料はTEM分析できた。それらはChondritic porous MMとfine-grained hydrated MMであった。これら2個については,雪を融解ろ過したAMMsとは構成要素の組成に顕著な違いはなかった。4個のAMMの軽元素X線吸収端微細構造(XANES)スペクトルを測定したが,試料汚染の兆候がみられよい結果は得らなかった。高空間分解能二次イオン質量分析(nanoSIMS分析)は,コロナウィルスの蔓延によって研究所を訪問することができず,測定はできなかった。分光観測も行うことができなかったが,不活発な短周期彗星の反射スペクトルについての過去のデータを解析して,脱水した含水鉱物が表面に存在することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,コロナウィルスの蔓延に伴う感染防止策で,研究活動は大幅に制約を受けざるを得なかった。研究代表者の九州大学の研究室では本格的に分析を再開できたのは秋になってからではあったが,研究実績概要で述べたように,AMMsの顕微拡散反射スペクトルを測定することができるようになった。また,雪の凍結乾燥物からAMMsを回収分析することを証明することができた。研究室の活動制限があったために,どちらも決定的なことをいうには分析するが不足している。どちらも追加の試料探索と分析を行う必要がある。 AMMの軽元素XANES分析において,試料汚染の兆候を研究分担者から報告された。このため,昨年度はAMMsのXANESはほとんど進展しなかった(はやぶさ2分析の予備実験にXANES分析の多くの時間が割かれたことも一因ではある)。nanoSIMS分析は,ドイツのマックスプランク研究所で行っているため,コロナウィルスの蔓延によって同研究所を訪問することができず測定は全く進展しなかった。分光観測についても同様で,ハワイで関することができなかった。そんな中で,過去に観測した不活発な短周期彗星の反射スペクトルを解析し,研究分担者が論文を出版して下さったのはありがたかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初研究計画のとおり,本年度ははやぶさ2探査機が小惑星リュウグウから回収した試料の分析を行うことが,研究代表者と多くの研究分担者の最も重要な研究課題となる。研究代表者においては,リュウグウにおける宇宙風化(大気のない天体表面が太陽風照射,微小隕石の衝突による局所加熱などによって変化する現象)を明らかにすることが目的となる。軽元素XANES分析もリュウグウ試料の分析がほとんどとなる。今年度指摘された微量オイル混入は,もし,顕著にあればTEMの観察/分析に顕著な影響が出るため,対応が難しい。ただし,装置を一般の実験室からクリーンルームに移動したので,装置の清掃とハンドリング器具の脱脂洗浄は試みる予定である。新たな試みとしては,研究代表者の異動先の京都大学には蛍光X線顕微鏡があるため,この装置を,AMMsをフィルタやシート上から探す工程に導入し発見率を上げることを計画している。 日本国内のコロナウィルス蔓延状況を考えると,海外に出向いて行うnanoSIMS分析と赤外分光観測は次年度も難しいかも知れない。研究代表者が異動した京都大学にはD/H比測定に特化したSIMSをお持ちの研究者が居られるので,nanoSIMSだけでなく,こうした装置の使用も検討したい。分光観測では,研究分担者の臼井博士が研究職ではなくなったため,代わりに上塚博士に加わっていただいた。上塚博士はTAO望遠鏡の分光器開発をされているので,今後,中間赤外分光観測が期待できる。
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Research Products
(1 results)