2019 Fiscal Year Annual Research Report
半導体・酸化物複合ナノワイヤによる光・電子・スピン工学の融合
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19H00855
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石川 史太郎 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (60456994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 明宏 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (00333906)
長島 一樹 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (10585988)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノワイヤ / 半導体 / 酸化物 / 量子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「半導体・酸化物複合ナノワイヤ」の高品質合成とその応用で光・電子・スピンを操作した新しい学術・工学を開拓する。化合物半導体の高い電子・光物性と金属酸化物の多様で安定した機能が協働する高機能ナノ材料を提案し、これを用いたフォトニクス・エレクトロニクス・スピントロニクス融合型ナノテクノロジーの創出を目指す。初年度には、研究の基盤となるナノワイヤ試料合成技術の確立と高度化に取り組み、以下に挙げる成果を得ることができた。 まず、高品質GaAs/AlGaOx/TiOヘテロ構造ナノワイヤ作製に取り組んだ。大きな進展が得られた成果としては、2インチのSi基 板上に大面積で市販p型GaAsと同程度以上の発光強度を有するナノワイヤ群の成長に成功した。さらに、自然酸化を用いることでプロセスダメージのない状態でアモルファスAlGaO最外殻層をGaAsナノワイヤに形成できること、同AlGaOが適切に内部GaAsの光閉じ込め効果を発揮し、発光強度増強効果を得るとともに、年単位 でその特性を維持する保護層として有効であることを見出した。また、形成されたGaAsナノワイヤ最外殻にTiOをスパッタリングすることで、正確に膜厚制御されたTiOをコーティングしたGaAs/TiOコア-シェル型ナノワイヤが合成できることを確認した。近赤外域で動作する高い熱安定性や発熱の抑制が期待される希釈窒化物・希釈ビスマスIII-V属半導体ナノワイヤの合成を発展させ、特徴的なGaAsBi量子構造ナノワイヤを得ることにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2インチのSi基板上で基板表面を覆いつくす大面積のGaAsナノワイヤ群を形成することに成功し、基板全域で、均質にp型GaAs基板と同程度の強度を有する室温での良好なGaAsバンド端発光観測に成功した。この結果は大出力が求められる、太陽電池、光触媒応用に有望である。 AlGaOx酸化膜層をGaAsナノワイヤに積層するため、従来行っていたプロセスが必要となる水蒸気酸化でなく、高Al濃度AlGaAsを最外殻に配置したコアーシェルナノワイヤを大気暴露による自然酸化のみで酸化膜が形成できる技術を確立した。同酸化膜は非常に安定であるとともに、内部GaAsコアの光学特性を保持・増強させられることを確認した。 光触媒応用に有望なTiOとGaAsの複合ナノワイヤの合成では、GaAsナノワイヤ最外殻にTiOをスパッタリングすることで、nm単位で厳密に膜厚制御されたTiOをコーティングし、GaAs/TiOコア-シェル型ナノワイヤが形成できることを確認した。 新しい近赤外帯域レーザー・センサー材料として有望なGaAsBi系ナノワイヤでは、Biに起因した特徴的構造変形から特異な量子構造が形成されることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は初年度に確立したナノワイヤ合成技術を踏まえ、合成技術の高度化とともにデバイス応用を見据えた評価、応用研究も併せて遂行していく。具体的には以下の項目に取り組む。 ①AlGaO自然酸化・水蒸気酸化層の特性評価と応用:自然酸化で形成したAlGaO層が内部のナノワイヤに与える影響を評価、デバイス応用への指針とする。白色発光を伴うことが判明している水蒸気酸化AlGaOナノワイヤはその発光特性をより詳細に把握し、応用への展開を見据える②GaAs/TiOナノワイヤへテロ構造の特性評価、光触媒応用の展望を開く。大面積にSi基板上に高品質で形成できたGaAsナノワイヤ群は大出力の光電変換に非常に有望である。この結果を応用へつなげるための基盤技術を構築していく。③希釈窒化物、希釈ビスマスGaAsNおよびGaAsBiナノワイヤの詳細な特製評価により、その近赤外域での動作性能、量子光学的性能、スピン工学的性能の指針を得る。
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