2020 Fiscal Year Annual Research Report
包括的な疾病負荷分析に基づく我が国の保健政策課題の実証的研究
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19H01074
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渋谷 健司 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (50322459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Rahman Mizanur 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10726433)
野村 周平 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (10799282)
田淵 貴大 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, がん対策センター疫学統計部副部長 (20611809)
山本 依志子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 政策科学研究部, (非)研究員 (50402730)
坂元 晴香 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (50738549)
齋藤 英子 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 研究員 (60738079)
米岡 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (60790508)
井上 真奈美 国立研究開発法人国立がん研究センター, 社会と健康研究センター, 部長 (70250248)
永田 知映 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 臨床研究教育部, 室長 (70385342)
西浦 博 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70432987)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 疾病負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国レベルではなく都道府県別の疾病負荷を包括的に分析し、それを具体的政策分析にも応用する試みである。研究代表者らによるこれまでの日本における全国及び都道府県レベルの疾病負荷に関する研究成果をさらに発展させ、最新の疾病負荷推計を用いて、現在、懸案事項となっている主な施策(地域医療構想、医療費、健康格差、医療の質、医師の働き方改革、イノベーション戦略)に直接資する分析を行う。本研究は、全国・都道府県レベルに加えて、市町村レベルの小地域で最新の疾病負荷推計を行い、我が国の主要な保健医療課題の実証的分析に継続的に疾病負荷を活用する基盤を確立することを目的とする。
令和1年度では、各種傷病の障害度の重み付けに関する研究、および都道府県別の最新且つ精緻な疾病負荷の推定を主に行った。各種傷病の障害度の重み付けは、死亡と障害の両方の包括指標である疾病負荷において、重要な役割を担う。GBDでは独自の調査に基づき、国年齢性別問わず、世界人口一律の障害係数が適用されている。一方、日本人人口におけるその障害係数の妥当性は未検討であり、本研究ではGBDの障害係数の枠組みを発展させ、介護人口の増加する日本人人口における障害度の重み付け評価方法を開発した。
また、最新疾病負荷の推定については、時空間ベイズモデルを含む最新のGBDの疾病負荷推計枠組みに基づき、各種政府統計個票データ、国内外の疫学研究、系統的レビューやメタ分析、多目的コホート研究(国立がん研究センター)、各種世帯調査・データベースを活用し、年齢別・性別別・都道府県別の最新の疾病負荷、及び平均寿命・健康寿命、そして各種危険因子の疾病負荷への寄与を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、各種傷病の障害度の重み付けに関する研究をファイナライズし、査読付き国際誌に投稿し(Population Health Metrics)、受理され、現在発表待ちである。これはインターネット調査を利用し、日本全国4万人弱の回答データから、日本独自の230を超える傷病の障害係数の推定を行ったものである。既存のGBDで使用されている各種傷病の障害度の重み付けは、世界人口一律の障害係数が適用されている。一方で、本研究は日本人人口に限った推計であり、ほとんどの傷病でGBD推定値と高い相関を見せたが、特に痛みを伴う傷病(骨折や切断など)において、日本人はより障害度を重くつける傾向があることがわかった。
また、最新疾病負荷の推定については、1990年から2019年の間 の平均余命、平均健康余命、主要死因について都道府県別の解析を行った。さらに、地域格差が生じた原因について、リスクファクタ (喫煙、運動習慣、食習慣)との関係性についても分析を行い、これら成果については主要医学雑誌であるThe Lancet誌に発表された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、新型コロナウイルス感染症の状況も鑑みて、2020年までの最新疾病負荷の推定を行なっている。また、令和2年度の成果として、平均余命、平均健康余命及び主要死因について地域間格差を明らかにしたが、こうした地域間格差が何に由来するのかについては、今後さらなる詳細な解析が必要である。とりわけ、リスクファクター(喫煙、食習慣、運動習慣等)や保健システムパフォーマンスの関係性について都道府県レベルでの解析を引き続き進めていく。
上記を実施するに際しては、疫学・統計学はもちろん、計量経済学や情報工学などの数量分析手法を駆使し、国内外の疾病負荷研究の実績のある研究者と、異なる学問分野で実績のある研究者が連携して行う学際的な共同研究を推進する。時空間ベイズモデル、ベイズ統計を用いた小地域推計、疾病のミクロシミュレーション、系統的レビュー、メタ分析、世帯調査等の個票分析などの数量分析を行いながら、本研究を今後の世界標準とするためにも、報告書作成や内外の専門誌への投稿、国民への発信等を通じて、研究成果を広く社会へ還元する。
例えば、現在疾病負荷に関する研究成果は、論文に加えて、MEDITECH FINDER(http://meditechfinder.org)にでも広く一般に公開している。今年度もこのウェブサイトを通じで、研究成果を一般向けに公表する。
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Research Products
(5 results)