2021 Fiscal Year Annual Research Report
言語・メディア・文化を横断するアダプテーションの総合的研究
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19H01250
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
今野 喜和人 静岡大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (70195915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大薗 正彦 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10294357)
安永 愛 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10313917)
山内 功一郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20313918)
ローベル 柊子 (田中柊子) 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20635502)
田村 充正 静岡大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (30262786)
南 富鎭 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30362180)
渡邊 英理 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50633567)
花方 寿行 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (70334951)
中村 ともえ 静岡大学, 教育学部, 准教授 (70580637)
RAUBER LAURENT 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 訪問講師(招聘) (70768134)
桑島 道夫 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (80293588)
Corbeil Steve 聖心女子大学, 現代教養学部, 准教授 (80469147)
大原 志麻 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (80515411)
原田 伸一朗 静岡大学, 情報学部, 准教授 (90547944)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アダプテーション / 翻訳翻案 / 比較文学文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
かつて原作(オリジナル)の劣化したコピーとして低い地位が与えられがちであった「アダプテーション」(「翻案」「二次創作」など)は、文学、映画、演劇その他の媒体においてすぐれて現代的な創造行為として脚光を浴びつつある。そこにはグローバル化やIT革命によって言語、メディア、文化の境界が消失する「ポストメディア」とも呼ばれる時代背景があり、広義の「アダプテーション」が日常生活の中にも浸透して、内外での研究も盛んに行われている。しかし対象となる範囲があまりにも広いため、分析が欠けていたり、理論化が満足に行われていなかったりすることがままある。本研究はアダプテーションの諸相について、研究の領域と方法とをできる限り広範囲に捉え、理論的な考察と絡めつつ多角的・重層的に分析して総合的に把握することを目指して研究を進めた。 研究3年目にあたる2021年度は、研究代表者および分担者が各自の研究対象について、これまでに進展した部分を報告し合い、文学、芸術、サブカルチャー等々と扱う領域が広いため、全体を有機的な総合へと繋げることを目的として研究を進めた。依然として新型コロナウィルス感染流行のため、対面での研究発表会を開くことができなかったが、オンラインを通じてほぼ問題なく意志の疎通が可能になった。 ただし予定していた出張、特に海外出張が実質的に不可能になったため、一部は当初の研究対象を変更している。特に研究代表者の今野と分担者の花方は従来の小説・映画研究から図像学的な研究にシフトを始めていて、研究範囲の拡大に寄与している。 なお、オンライン会合の開催が容易になったため、昨年度に続いて海外(スイス)在住の研究者に発表を依頼し、関係する日本各地の研究者の参加も仰いで、翻訳とアダプテーションをめぐる微妙な問題について、活発な討論が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の欄にも記載したように、新型コロナウィルス感染流行の影響は研究の進展および方向性にいくつかの影響を与えた。国内外の図書館・資料館での実地調査に加え、実際の演劇公演や、サブカルチャー関連では海外で開催されるイベントやコンベンションなどに参加することができなくなったことは、アクチュアルな研究という面での支障をもたらした。 しかし、Zoomを利用したオンラインでの研究会、講演会、学会、その他の情報交換のハードルが低くなり、招聘のスケジュール調整や交通費がネックになってこれまで実現していなかった交流が可能になった部分もある。とりわけ2021年度も海外(スイス)在住の研究者の講演会を開催し、研究会メンバーに加えて日本各地の研究者の参加を仰げたことは、研究全体に新たな方向性を加えることができた。これらのことから、本来目指した方向からは多少軌道修正しつつ、おおむね順調に研究は進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は本研究の最終年度にあたるため、代表者および分担者の研究成果発表に向けて準備を行う。現在の予定では、夏までに最終的研究発表のタイトルと概要を報告し合い、オンライン研究会によって議論を積み重ねる。その上で、年末を目途に各自の研究成果を纏め、年度末までの全体報告書作成に繋げる。形式としては、研究会メンバーが十数年前から発行している研究誌『翻訳の文化/文化の翻訳』の臨時増刊号として、電子出版の形で行う予定である。また、海外出張への障害が取り除かれた場合は、海外で開催される学会・研究集会での発表参加も検討したい。 これまでと同様、国内外の研究者や創作家、演出家などを招聘する場合は、研究会メンバーのみならず、学生や一般市民を対象とした公開の研究集会や講演会を開催する予定だが、今年度は感染症対策に万全を期した上で対面での開催可能性を含めて考えていく。すでに7月に開催が決定している野谷文昭東京大学名誉教授の講演も、対面開催の方向で調整中である。
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