2021 Fiscal Year Annual Research Report
A preliminary study on marked nominative dialects of Japanese and Ryukyuan
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19H01255
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下地 理則 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (80570621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 走一郎 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (00796427)
白岩 広行 立正大学, 文学部, 准教授 (30625025)
平子 達也 南山大学, 人文学部, 准教授 (30758149)
野間 純平 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 講師 (30780986)
大槻 知世 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 講師 (30805205)
小西 いずみ 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60315736)
平塚 雄亮 中京大学, 文学部, 講師 (70757822)
日高 水穂 関西大学, 文学部, 教授 (80292358)
久保薗 愛 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (80706771)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有標主格 / 格 / 情報構造 / 日琉諸語 / 方言研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研は,日琉諸語を広く対象に,有標主格性(自動詞文・他動詞文の主語に格標示されるが他動詞目的語への格標示が抑制される性質)を記述し,通言語的に極めて稀とされる有標主格性の基盤の解明を目指す研究である。フィールドワークによるデータ収集と既存の談話資料の分析により,有標主格性がどれほど認められるかを調べ,有標主格性を支える基盤として有力な情報構造的要因を軸に様々な方言における有標主格性の基盤をさぐる。
本年度は,主に既存資料の電子化,データベース作成などを中心に行い,一方でこれまでの成果を学術誌・書籍の形で出版した。本研究は,有標主格性という概念を軸に,情報構造と格標示の関係を広く考察するのが目的であるが,本年度は『日本語の格表現』(くろしお出版,2022年)において具体的な成果が多数報告されている。例えば,研究代表者の「日琉諸語の格体系:概観と類型化」は,東北から南琉球に至る諸方言の格体系の概要を示し,情報構造と格標示の関係について議論している。そこでは有標主格性という概念についても導入している。本書は,研究代表者の他,本科研の分担者である小西いずみ氏も寄稿している。この業績の他,研究代表者が日琉諸語の文法概説をまとめた書籍を企画し,Brill社から出版されることが決定している。この書籍もまた,格体系の多様性を報告するセクションもあり,イントロの章では有標主格性に関する現時点の動向を示している点で,本科研の重要な,そして国際的な成果となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍にあってフィールドワークが不可能な中,既存の資料を用いて業績を発表するなど,順調な進展が見られると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,有標主格性及びその関連諸概念,特に情報構造や有生性,動作主性などの概念に着目しながら共通の調査票を作成し,各方言でデータを収集し,比較検討する機会を持ちたい。フィールドワークが不可能な場合は,既存の談話資料を用いた比較研究を模索する。最終的に,学会のワークショップで有標主格性なる概念を広く方言研究者・言語研究者に知ってもらう機会にしたい。
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