2021 Fiscal Year Annual Research Report
「熊本藩関係貴重資料群」の総合的解析による日本近世の意思決定構造の実証的研究
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19H01310
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
今村 直樹 熊本大学, 永青文庫研究センター, 准教授 (50570727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久留島 浩 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任教授 (30161772)
稲葉 継陽 熊本大学, 永青文庫研究センター, 教授 (30332860)
三澤 純 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (80304385)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本近世史 / 藩政の意思決定構造 / 惣庄屋(大庄屋) / 比較藩研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2016年の熊本地震後に熊本大学へ移管された惣庄屋文書である古閑家文書(個人所有、熊本大学寄託予定、約20,000点)の総目録を作成し、永青文庫細川家文書・松井家文書など、熊本大学保管の「熊本藩関係貴重資料群」と総合的に解析するものである。この作業を通じ、近世大名領国における藩政の意思決定構造の全体像、および地域行政組織(組合村・大庄屋など)の活動実態を解明することを第一の目的とする。さらに、得られた成果を全国的な国持大名領などの事例と比較検討し、日本近世社会における意思決定構造・地域行政組織の共通性と固有性を検出することを第二の目的とする。 以上の目的のもと、2021年度の研究では、①古閑家文書の総目録作成、②熊本藩領と幕府領・他藩領の地域行政組織に関する比較共同研究に取り組んだ。 ①では、科研費で雇用した大学院生・学生アルバイトの助力を得て、古閑家文書の目録作成と目録調書のデータ化作業を行った。その結果、1,949点の目録を作成するとともに、1,490点の調書データの入力を完了することができた。目録作成作業を通じて得られた知見を、研究代表者による論文「近世後期藩領国の河川分水問題と流域社会―熊本藩領の白川を事例に―」(『永青文庫研究』5、2022年3月)に反映するとともに、同じく研究代表者による学会発表や一般市民向け講演会を通じて発信することができた。 ②では、東京・千葉・石川・岡山・島根・愛媛各県の研究者とともに、近世の地域行政組織に関する研究会を、2021年9月24日、同12月24日、2022年3月30日の3回、いずれもオンラインで開催した。 本研究の最終年度にあたる2022年度には、共同研究の成果を総括するシンポジウムを熊本で開催予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に続き、2021年度も新型コロナウィルス感染症の深刻な影響を受けたが、本研究の重要な柱である古閑家文書の総目録作成は順調に進んでいる。一定数の目録を作成するとともに、目録調書のデータ入力作業も十分に進めることができた。また、目録作成過程で見出された手永・惣庄屋制に関する知見や重要史料に関しては、研究代表者による学術論文や研究発表、一般市民向けの講演会に反映させることができた。 もう一つの柱である地域行政組織の比較共同研究については、オンラインの研究会を3回開催し、相互に議論を深めることで、2022年度に予定するシンポジウムに向けた課題と方向性を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①古閑家文書の総目録作成、②地域行政組織の比較共同研究について、2021年度までの成果をふまえて継続的に取り組む。 ①については、作業に従事する学生アルバイトとともに、目録作成および目録調書のデータ入力作業を進める。古閑家文書の近世部分については一定の目録作成を完了したため、2022年度は近代部分の目録作成に着手する。得られた知見については、引き続き、研究代表者・分担者による学術論文に反映させるとともに、古閑家文書における災害関係の重要史料については、2023年2月刊行予定の史料集『永青文庫叢書 細川家文書 災害史料編』に収録予定である。 ②については、対面式とオンラインの研究会を3回程度開催した後、2023年3月には熊本大学で共同研究の成果を総括するシンポジウムを開催予定である。
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