2020 Fiscal Year Annual Research Report
「隠し売女」から「淫売女」へ―近世近代移行期における売春観の変容
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19H01314
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
横山 百合子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (20458657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣川 和花 専修大学, 文学部, 准教授 (10513096)
森田 朋子 中部大学, 人文学部, 教授 (80293108)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近代移行期 / 性感染症 / 遊廓 / 売春観 / 芸娼妓解放令 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内調査の一部と海外資料調査はCOVID-19 感染拡大により未実施となったが、これを除いて順調に推移しており、初年度、第2年度収集の資料分析に基づいて、以下の点を解明し成果を公開することができた。 (1)本研究を始めるにあたっての作業仮説である、近代初頭の「売春の再定義」の実態を、主に東京、横浜など買売春統制政策がもっとも強く行われた地域に即して明らかにし、移行期の買売春政策の実態に接近できた。 (2)近代の性売買システムの特徴の一つである検梅による医療的統制が地域のなかでどのように行われたのかを、横浜、喜連川などをフィールドとし、医療者の関わり方を含めて具体的に解明した。 (3)売春観の変容について、幕末から明治末期ころまでの遊女の書状や裁判関係資料などを中心に明らかにした。その際、概括的に売春観の変容を捉えるのではなく、①娼妓・芸妓など個々人の置かれた環境とそれに対する芸娼妓の主体として受けとめ、②妓楼経営者など買売春にかかわる種々の人びとの動向、③そのような娼妓・芸妓への社会的なまなざしの変化、の三点に着目し、時期的変化を踏まえて分析を進めた。その際、錦絵・写真など芸娼妓の表象も分析素材とし、売春観の変容を総合的に把握することに努めた。以上の成果の一部は、4つの雑誌論文等のほか、2020年10月6日~12月6日に国立歴史民俗博物館で開催した企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」第6章「性の売買と社会」において発表し、近世近代日本における性売買の実態に切り込むものとして社会的関心を集め、多くのメディアにも取り上げられた(展示全体の紹介含む新聞記事数174、雑誌記事数54、web記事202、TV/ラジオ9回)。 一方、芸娼妓解放令の歴史的意義と売春観の変容を国際環境を視野に入れて解明するという課題については、遅延している一部の調査を最終年度で進め、取り組みを強めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19感染拡大による資料所蔵機関の閲覧停止・制限のため、本年度終了予定の国内資料収集と分析が遅れている。調査環境が整い次第、早急に取り組む予定である。また、海外資料調査については、研究期間内の実施困難も想定されるが、状況の許す範囲で実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度未実施である海外調査については引き続き困難も予想されるため、当該期の国際的な買売春政策と実態に関わる海外の活字英語文献調査の範囲を広げ、国内で実施できる代替措置の可能性を最大限追求する。これとあわせて国内資料を中心に分析・研究をすすめ、近代移行期の買売春の連続と断絶の様相を、ジェンダー視点を組み込みつつ解明するという、本研究の目的の達成をめざす。また、最終年度には、その成果を論文・書籍により公開すると同時に、年度末に中部大学において総括シンポジウムを開催する予定である。
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Research Products
(13 results)