2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H01343
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
岸本 直文 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (80234219)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 倭国王墓 / 前方後円墳 / 主系列 / 副系列 / 第3の系列 / 設計原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)倭国王墓の設計原理と2系列について、主系列2基(仲津山・大仙古墳)と副系列2基(上石津ミサンザイ・誉田御廟山古墳)の分析をさらに進め、実施設計案をまとめた。仲津山古墳の210歩に加え、大仙古墳が350歩の設計である蓋然性が高いと判断され、これが主系列墳の割り付け案分(6+6+3+6=21単位)によると見通されたことは大きな成果である。これにより中期の2系列の連続性をさらに裏付けることができると思われる。 (2)また副系列の誉田御廟山古墳と、これをモデルとする複製墳を設計する場合の具体的なあり方について、調査が進む久津川車塚古墳を事例に分析を行った。その結果、誉田御廟山古墳をもとに基本設計が導かれるが、実施設計において後円部径が区切りの良い寸法に変更され、それにあわせて接続部長を調整していること、後円部の下段・中段・上段径が5:4:3に割り付けられていることを明らかにできた。 (3)主系列の復元の上で、6世紀前葉の今城塚古墳が、墳丘の傷みが大きく明確でない点を補うため、福岡県・岩戸山古墳の測量調査を実施した。これにより、群馬県・七輿山古墳や愛知県・断夫山古墳、奈良県・市尾墓山古墳を加味し、今城塚型の設計を提示できる見通しが得られた。 (4)第3の系列の追究については、2019年度の西陵古墳の外周の測量調査により、2020B年度に墳丘測量図を完成させた。2020年には、宮内庁と地元奈良県・奈良市がウワナベ古墳の確認調査を実施し、ウワナベ古墳と西陵古墳が同一設計である蓋然性が高いと判断できるに至った。そして第3の系列で時期が下る川合大塚山古墳の測量調査を行った(地元名称にしたがい河合から名称変更)。現在、その成果を整理中であるが、前方部が開かない共通した枠組みで、そのなかで前方部が後円部より高くなっており、ウワナベ・西陵古墳から川合大塚山古墳への連続を明らかにできる見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を進める上で、重要ながら資料的に不備のある前方後円墳の測量調査は、予定していた奈良県・川合大塚山古墳と福岡県・岩戸山古墳について実施することができた。とくに川合大塚山古墳においては、周濠部の地上レーザー測量を先行して実施することで、手測りによる墳丘部の測量がきわめて効率的に実施でき、大型前方後円墳の測量を実施する上で、調査手法を確立させることができたと考えている。また、久津川車塚古墳や西陵古墳などについての、2019年度の外周部などの補足的な測量調査にもとづき、2020年度に周辺地形を含めた図化を完了することができた。 これらの新規素材を得ての分析面においては、倭国王墓の2系列について、仲津山古墳・上石津ミサンザイ古墳・誉田御廟山古墳・大仙古墳について、空中レーザー測量にもとづく精細図にもとづき、割り付けの基本設計が異なることを具体的に示すことができた。また王墓をもとに規模を縮小させた地域首長墳の設計を立案する具体像について、誉田御廟山古墳をモデルとする久津川車塚古墳を事例に、試案を提示することができた。 以上のように、2020年度は、本研究の柱である主系列墳と副系列墳の系列差の検証、また各系列のなかでの仕様の変化を明らかにする上で、基本的な見通しを得ることができたといえる。そして第3の系列の提示についても、西陵古墳と川合大塚山古墳の墳丘測量図の整備にもとづき、その連続性を明らかにできる見込みが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、重要な前方後円墳の新規の測量調査として、福岡県・岩戸山古墳について補足を行い、新たに奈良県・狐井城山古墳について実施する予定である。また、倭国王墓のなかで墳丘の傷みが大きい津堂城山古墳の復元が課題となっており、経費的に可能であれば、城山古墳をモデルとすると思われる兵庫県・玉丘古墳の測量調査を実施することで、解決したいと考えている。また、6世紀代の倭国王墓と地域首長墓の関係解明のため、奈良県・石上大塚・ウワナリ塚古墳の測量調査も検討している。 古墳時代中期の、倭国王墓の2系列の検証および第3の系列の復元という分析面については、2020年度に得た見通しの下に具体的に進める。その上で、前期後半の倭国王墓の2系列についての設計復元を行うことで、第3の系列がどのように分岐するのかを解明したい。 さらに倭国王墓の設計にもとづく地域首長墳の実施設計決定の具体的解明について、2021年実施分を含め本研究で整えることができた資料をもとに、津堂城山古墳→玉丘古墳、誉田御廟山古墳→久津川車塚古墳、今城塚古墳→岩戸山古墳の3事例について試みることとする。
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Research Products
(2 results)