2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the human population history in boundary area between East Asia and Siberia based on ancient genome analysis
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19H01356
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 丈寛 金沢大学, 医学系, 助教 (10558026)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 古代ゲノム / 古人骨 / 集団遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
礼文島浜中2遺跡から出土したオホーツク文化終末期の人骨から取得した高精度ゲノムデータに基づいて実施した解析から、当該個体が縄文集団、カムチャツカ集団、アムール集団の3系統の混合個体であること、縄文集団とカムチャツカ集団の混合は約2000年前、アムール集団との混合は約1600年前に起きたこと、HLA-B*40アレルをホモ接合で持ち、SAPHO症候群のような骨過剰形成を伴う疾患への脆弱性をもつ可能性が高いことを示唆する結果を得た。これらの成果を論文にまとめ、Genome Biology and Evolutionに投稿し、受理された。 今年度に予定していた新規の古人骨資料の収集については、新型コロナウイルスCOVID-19感染症の蔓延に伴い、予定されていた礼文島浜中2遺跡における発掘調査が中止となったため、実施できなかった。 ロシア‐モンゴル国境付近の遺跡から出土した匈奴期の個体から取得したDNAについてショットガンシーケンスを行った。マップ率は1.2%であったため、ディープシーケンスは困難と判断し、low-coverageデータでの解析を実施した。モンゴルからロシアのバイカル湖周辺に至る地域の古人骨ゲノムとの比較解析を行ったところ、当該個体は、北東アジア沿岸部Devils Gate Caveから出土した新石器時代人に関連する祖先要素とヤムナヤ文化の担い手をはじめとした西ユーラシアステップ地帯の青銅器時代人に関連する祖先要素の混合個体として説明することが可能であった。この特徴は近隣地域から出土した既報の匈奴個体とも一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で分析したDNA試料に、既報の古代DNA分子と比較して著しく長いDNA分子が含まれていた点について、古代DNA特有のダメージパターンの存在やコンタミネーション率が低いことを示すことによって、現生DNAの混入ではないことを示すことができると考えていたが、査読者の指摘が非常に厳しかったため、論文の受理までに想定より遥かに長い時間を要した。 また、新型コロナウイルスCOVID-19感染症の蔓延により、予定していた資料収集活動が実施困難になったため、既に手元にある資料のみを用いて成果をまとめるように研究デザインを変更せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Low-coverageデータを取得した匈奴個体については、既報のモンゴルやバイカル湖周辺の古人骨ゲノムデータとの比較解析を進め、匈奴集団の成り立ちや地域差について検討する。 2017年出土のオホーツク文化初期の人骨から回収したDNAについては、ヒトDNAの含有率次第ではあるが、35~50×程度の平均深度を目標として、ハイスループットシーケンスを実施する。
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Research Products
(3 results)