2019 Fiscal Year Annual Research Report
Historical Research on Cross-curriculum Learning based on Enhancement and Utilization of the Database of Drawing Textbooks in the Meiji Period
Project/Area Number |
19H01677
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
赤木 里香子 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (40211693)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 拓朗 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 主任学芸員 (80435825)
金子 一夫 茨城大学, 教育学部, 名誉教授 (70114014)
山口 健二 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (90273424)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 美術教育史 / 教科書データベース / 図画科 / 手工科 / 臨画 / 鉛筆画 / 毛筆画 / 教科横断的学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は3か年の研究期間の初年度であるため、5月に東京都千代田区、7月に島根県松江市において研究代表者・分担者全員による打ち合わせを実施し、研究の目的および具体的な目標の検討とスケジュール確認を行った。 本研究の第一の目的は、同一メンバーで科研費を受けた研究課題(15H03502)の成果として2018年より公開中の「明治期図画手工教科書データベース(サンプル版) 」に、新規データを加えて情報量を充実させるとともに、臨画(模写)の手本とされた各種の図の内容について検索可能なシステムを構築することである。すでに図の高精細画像データは1万点近く蓄積されているので、今年度はまずサンプル版のシステムにこれらのデータを投入できるよう準備を進めた。 研究分担者角田拓朗が、神奈川県立歴史博物館所蔵の橘忠助氏旧蔵美術資料群に含まれる図画教科書を中心とする約70タイトルについて、Excelファイルに「書名」「著者・編者・校閲者・監修者」「発行社/発行者」「出版年月日」等の書誌データと、分類項目、キーワードを入力する作業を進めた。分類項目とキーワードは、手本の図に「何が描かれているか」に着目して設定する。研究分担者金子一夫のアドバイスにより、1881(明治14)年の小学校教則綱領に示された小学中等科・小学高等科の図画科の内容に基づいて、「直線、曲線、単形、紋画、器具、花葉、家屋、草木、禽獣、虫魚、山水、幾何画」という大きな分類を手がかりとし、さらに各図に具体的なキーワードを付していくこととなった。 明治期に刊行された図画手工教科書の総タイトル数は700種に達すると推定されるため、今年度のデータ整備量は全体の約10%にあたる。これらのデータが実際にデータベース上でどのように見えるか、検索結果に問題ないかを確認すれば、分類項目の立て方、キーワードのつけ方に関して調整すべき点が明らかになるだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)上述したように、令和元年度においてデータ整備の作業は着実に進展した。サンプル版データベースに新規データを投入して試験的に稼働する段階には至らなかったが、作業チームによってデータ整備のノウハウが積み上げられ、今後の作業スケジュールについても見通しを持つことができた。 (2)本研究の第二の目的である、明治期図画手工教科書データベースの充実と活用に基づいて、選択された図や絵の持つ意味、配列の意図を明らかにし、その全体像を問い直すことについては、準備段階にとどまっている。図画科・手工科に限らず、広い視野から手本となった図の意味を探る必要があるだろう。ただし現時点でも、明治期の児童や青少年の図画作品について、その手本となった図や教科書を特定できた事例が数件あり、本データベースが美術教育史研究の可能性を拓くものであることは確実と言える。 (3)研究代表者赤木里香子は、近代初等中等教育における教科横断的学習の展開を跡づけるうえで、ペスタロッチを始祖とする実物教授や開発教授の導入と図画手工教育との関連について注目しており、2020(令和2)年2~3月にアメリカとカナダで調査を実施し資料を収集する予定であった。しかし、コロナ禍により海外調査を行うことはできず、郵送およびオンラインによる資料収集を行うにとどまった。 (4)2020(令和2)年3月27日に、メンバー全員による成果発表を予定していた第42回美術科教育学会千葉大会がコロナ禍により中止となった。なお、発表予定の内容については同大会の研究発表予稿集に掲載した。
以上のような観点から、進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019(令和元)年7月の打合せにおいて、サンプル版データベースを作成した業者と協議した結果、今後のシステム改修にあたっては、デジタル画像を相互運用するための国際的な枠組みであるIIIFを導入することを決定した。IIIFは世界中の有力なデジタルアーカイブにおいて標準化しつつある規格で、各地で公開が始まっている多様な画像データベースと関連づけ、画像を比較できるように拡大縮小したり並べて表示することも可能となる。本研究による画像データベースが完成すれば、日本と欧米の図画手工教科書、多種多様な絵や図と比較することはさらに容易になると考えられる。 3か年の研究計画の最終段階でこのようなデータベースの完成を見るためには、まず令和2年度において、令和元年度のデータ整備作業を反映した、今後のデータベース拡充のベースメントとなるようなシステムの構築を試みることが重要である。 サンプル版データベースはデータ数も少なく試作段階であったため、これをバージョン0と捉え、令和2年度には追加データの整備をさらに進めながらバージョン1の完成をめざす。さらに令和3年度にも継続してデータを増やし、微調整を重ね、バージョン1からバージョン2、2.1、2.2へ進めることができればと考える。また、サンプル版のシステムの検索性および一覧性、画像をカテゴライズする際の分類基準については解決すべき問題が多いため、より使いやすいものとなるよう検討を重ねる必要がある。 以上のような方策によって、試験的運用にとどまっていたバージョン0からのバージョンアップを終えた明治期図画手工教科書データベースの恒常的公開を、令和3年度以内に開始したい。本データベースの活用によって、明治期図画手工教科書に現れる絵や図がどのような意味を持っていたのか、どのような教育目的と結びついていたのか、新たな視点から問い直すことが可能になるだろう。
|
Remarks |
バージョンアップに伴い、接続できない場合があります。完成版の公開は2021年9月頃に開始予定です。以降も適宜バージョンアップを継続します。
|
Research Products
(12 results)