2021 Fiscal Year Annual Research Report
縦断的調査による場面緘黙の実態解明と効果的な介入手法の確立
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19H01703
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
高木 潤野 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (00588519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶 正義 関西国際大学, 人間科学部, 教授 (00623563)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 場面緘黙 / 縦断的研究 / SMQ / 不安症 |
Outline of Annual Research Achievements |
場面緘黙は話す力があるにも関わらず学校等の社会的状況において話せなくなってしまうことを主な症状とする。これまで日本では場面緘黙についての研究は少なく、実態がまだ十分に明らかになっていない。 本研究は、縦断的調査により場面緘黙児の緘黙症状や不安症状の変化を測定し、有効な介入方法について明らかにすることを目的としている。またこれまで日本語版の標準化が行われていなかったSMQ(場面緘黙質問票)を標準化し、研究や臨床目的で活用しやすくすることも目指している。 本研究では、これまでに幼児から中学生までの場面緘黙児210名を対象に調査票を郵送し回答を得た。またすべての調査対象者に対して面談を行い、緘黙症状の状態等について把握した。 調査開始から1年後の緘黙症状の変化を、保護者からの評価によって測定した。その結果、「顕著に改善した」者は13.8%、「やや改善した」者は39.3%であり、全体の半数程度が改善傾向を示したことが明らかとなった。一方、「やや悪化した」者は10.3%、「顕著に悪化した」者は1.4%であった。年齢別に見ると、「顕著に改善した」「やや改善した」の割合は、幼児期が81.6%と最も高く、小学校低学年39.6%、小学校高学年48.6%、中学校41.7%であった。緘黙症状の変化については引き続き縦断的にデータを収集していくとともに、変化に影響した要因について分析し、有効な介入方法を検討する予定である。 また2021年度は4~12歳の139名を対象に、SMQ(場面緘黙質問票)を標準化するための分析を行った。定型発達児を対象にした先行研究のデータとの比較から、日本語版SMQの判別的妥当性が示された。また因子分析の結果、原版である英語版のSMQの3因子構造とは異なり、日本語版では4因子が抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集及び分析については順調に進んでいる。 2021年度は研究成果の一部を学会誌に投稿することができた。学会誌は査読を受け修正をしているところであり掲載には至っていないが、概ね必要な修正は完了しているものと捉えている。その他のデータについては現在論文を執筆中である。 また2021年度は研究成果の一部を国際学会での学会発表に投稿した。2022年6月に行われる大会で発表予定である。 新型コロナウィルスの影響により、研究の進行に修正が必要なところが生じたため、評価の区分は「(2)おおむね順調に進展している。」とした。当初開設していた対面型の相談室は2020年度に閉鎖した。これにより調査のために必要な面談が実施しづらくなったものの、2021年までに必要最低限の面談は実施し終えていたため研究の進捗上は大きな影響は受けなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進として、大きく分けて以下の3点が挙げられる。 1.縦断的調査による緘黙症状の変化について学会誌に投稿する:現時点で3年目(調査開始から2年後)の調査票の回収が完了しており、これから入力作業を開始する。このデータを分析し、緘黙症状の変化とそれに寄与した要因について学会誌に投稿する。投稿先は「特殊教育学研究」を予定している。 2.関連する学会等において研究成果を公表する:緘黙症状の変化以外のデータについても分析し、場面緘黙の実態について明らかになった事柄を関連する学会等で公表する予定である。また学会だけでなく親の会や当事者団体、その他関連する団体等に対しても研究成果を公表し、啓発をはかる。 3.引き続き縦断的なデータを収集する:2022年度は4年目となり、調査開始から3年後のデータを収集する。3年後となると、調査開始時に小学校低学年であった者以外は、進学等により調査開始時とは異なる学習・生活環境にあることが予想される。このような環境の変化が緘黙症状の変化にどのように影響したかについても分析したい。
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Research Products
(7 results)