2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of high-energy neutrinos at the LHC
Project/Area Number |
19H01909
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有賀 智子 (古川) 九州大学, 基幹教育院, 助教 (00802208)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 敏行 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (50345849)
佐藤 修 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任講師 (20377964)
音野 瑛俊 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 助教 (20648034)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高エネルギーニュートリノ / ニュートリノ反応 / LHC |
Outline of Annual Research Achievements |
LHCにおける高エネルギーニュートリノ反応の初検出を目指して2018年にテストランとして実験地点に設置したエマルション検出器の解析をまとめた。これまでにエマルションフィルムの読み出しを行い、高密度のミューオンの中でのニュートリノ反応点の探索手法を構築してきた。物理ランでは、荷電カレント反応で生じるレプトンの検出を行うことにより3 世代のニュートリノの識別、背景事象の分別を行うが、テストランの検出器は小さくミューオンの同定はできないため中性ハドロン反応による背景事象が多い。粒子の角度を組み合わせた情報など幾何学的パラメータのみを用いた多変数解析によるニュートリノ反応と中性ハドロン反応の識別を行い、ニュートリノ反応検出についての最終結果をまとめて論文を執筆した。また、2021年度からのニュートリノ照射実験に向けて、エマルションフィルムと1mm厚のタングステン板の積層構造からなる検出器の製作を進めた。繰越金により検出器を構成するタングステン板の購入を行い、その品質チェックを実施してきた。エマルションフィルム製造システムについては使用する準備を進めた。タングステン板とエマルションフィルムを組み立てて実験地点となる加速器トンネル内に設置するための支持構造物のデザインを完成させ、製作を行った。2022年初旬からのニュートリノ照射実験(物理ラン)に向けてニュートリノ検出器をインストールし、未開拓の高エネルギー領域における3世代ニュートリノの測定を実施する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CERNのLHCで生成される数100GeVから数TeVのニュートリノによる反応を研究するため、LHC陽子衝突点からビーム軸上約480m離れたトンネル内にエマルションフィルムを用いたニュートリノ検出器を設置し、3世代それぞれのニュートリノ反応を検出する計画を推進している。本年度は、2018年にテストランとして実験地点に設置したエマルション検出器の最終解析を進めた。これまでにエマルションフィルムの読み出しを進め、高密度の飛跡の中でニュートリノ反応点を探索する手法を構築してきた。テストランの検出器は小さくミューオンの同定はできないため中性ハドロン反応による背景事象が多い。粒子の幾何学的パラメータを用いた多変数解析によるニュートリノ反応と中性ハドロン反応の識別を進め、ニュートリノ反応検出についての結果をまとめて論文を執筆した。また、物理ランに向けて解析体制の構築に取り組んできた。2021-2024年のニュートリノ照射実験に向けては、エマルションフィルムとタングステン板の積層構造からなる検出器の製作に取り組んだ。エマルションフィルム製造システムを使用する準備を進めるとともに、繰越金にて検出器を構成するタングステン板の購入を行った。タングステン板とエマルションフィルムを組み立てて実験地点となる加速器トンネル内に設置するための支持構造物のデザインを完成させ、製作を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年にテストランとして実験地点に設置したエマルション検出器の解析が最終段階であり、まずは執筆してきた論文を仕上げて発表する。それとともに、2022年初旬からのニュートリノ照射実験(物理ラン)に向け、荷電カレント反応で生じるレプトンの識別手法をさらに詳細に研究し、解析体制を確立する。また、物理ランに向けて、30cm×25cmのエマルションフィルムと1mm厚のタングステン板の積層構造からなる検出器を製作する。検出器を構成するタングステン板の品質チェックを遂行するとともに、エマルションフィルム製造システムにて本実験に適した乳剤・フィルムを研究し製造する。2021年度末までに、CERNの暗室にてニュートリノ検出器として構築し、実験地点となるLHCトンネル内に設置する。並行して、物理測定に向けて、より詳細なニュートリノフラックスの推定を進め、それを踏まえて、ニュートリノ反応断面積測定精度の予測や新物理モデルの検証に取り組む。
|