Outline of Annual Research Achievements |
過去3年間に引き続き, 東アジア天文台JCMT 15m鏡のサブミリ波偏波計POL-2で取得したデータを利用して研究を進めた. 本科研費研究の狙いのひとつは, 分子雲コアの重力収縮開始時における磁場構造(以下, 始原磁場と呼ぶ)の推定であるが, 現在の磁場構造から推定するためには始原磁場の痕跡ができるだけ残っている, 静穏な環境下のコアからサンプルを構築する必要がある. COVID-19による観測中断のため「繰越」した観測を2022年度に完了できた. 本研究で構築するサンプルの最後のピースとして, 比較的距離が近く, 空間的に広がった放射も検出できる柱密度をもつ領域である, オリオン座分子雲5(OMC-5)領域を選定し, 2022年10月に観測, 翌1月にデータ処理を完了した.
あくまでも簡易解析の結果ではあるが, 残存分子雲コアガスの磁場は, 母体ガスであるフィラメントの長軸方向と直交あるいは大きな角度をなすことが多いとわかった. 速度場解析を行なった先行研究のデータと比較できるコアは, 8個程度に限定されるが, コアの回転軸と磁場の向きは平行に近く, それらがフィラメントと直交するケースが多い. フィラメント中でコアが形成される場合, ガスの供給元はフィラメント内が主となるので, ガス降着に伴い, トルクがかかり, フィラメントと直交する方向に回転するであろうことから, 以上の幾何的関係は合理的である. 偏波角分散関数を求めると, 局所的に磁場が揃っている. 始原磁場がどのような過程を経て, 現在の構造となったかは, 数値シミュレーションと比較して追究する. 当該領域では, フィラメントを構成するガスが, ほぼ散逸している. 他のデータと併せて残存フィラメントガスの質量を定量できれば, フィラメントとコアのスケールでの星形成効率(大きなスケールの質量のうち, どれほどの比率の質量が, より小さいスケールの構造となるか)を推定できるかを評価したのち, 速やかに論文化する.
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