2020 Fiscal Year Annual Research Report
木星の形成は原始太陽系星雲を分裂させたのか? -分化隕石からのアプローチ-
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19H01959
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
山口 亮 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70321560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 直樹 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (00599805)
岡崎 隆司 九州大学, 理学研究院, 准教授 (40372750)
飯塚 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70614569)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エコンドライト / 原始惑星 |
Outline of Annual Research Achievements |
隕石や惑星物質は、安定同位体組成から炭素質型と非炭素質型に分類されることがわかった。炭素質型は原始太陽系の外側、地球や火星などを含む非炭素質型は内側で形成したとされる(二分性モデル)。このモデルは一見、多くの隕石データを単純に説明できたように見えるが、少数のグループであるエコンドライト(分化隕石)を見たときに必ずしもそうとは言い切れない。本研究では、エコンドライトに着目し、初期太陽系の組成構造やその進化過程の解明に迫る。2020年度の主な成果は、最近発見されたエコンドライトErg Chech 002 (EC002)の組織や鉱物組成、放射年代からその形成史を推定したことである。元素組成の特徴からEC002は、非炭素質エコンドライトに分類され、岩石学的特徴から稀少な(現在までに数個しか見つかっていない)安山岩質のエコンドライトであることがわかった。推定した冷却史と放射年代(Al-Mg)から、この隕石の固化年代は現在知られているエコンドライトの中では最も古いことがわかった。他の特徴としては、主要なエコンドライト(ユークライト等)に比べ揮発性元素に富んでいることである。また観測データから現在の太陽系にこのようなタイプの小惑星は稀であるがわかった。この結果は、母天体である分化微惑星や原始惑星が現在までに失われた可能性を示し、それらの天体の原岩組成や形成史に関し検討が必要であることを示す。その他、揮発性成分に乏しいユークライトやメソシデライトなど非炭素質エコンドライトの岩石学的、同位体学的特徴を明らかにしようとした。今後、非炭素質エコンドライトの原岩の多様性やその形成過程について再検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究は概ね順調に進んでいるといえる。非炭素質エコンドライト(HED隕石、メソシデライト、ユレイライト)の組織観察、鉱物組成分析(熱的イベントの指標化)に関しては若干遅れがみられるが、研究途上で重要な発見もあり、全般的には順調に進んでいる。メソシデライト、ユレイライト隕石に関しては、組織観察を行い、次のステップであるEPMAによる主要元素やLA-ICP-MSによる微量元素分析を行う予定である。安山岩質エコンドライト(EC002)の研究に関しては当初予定になかったが、研究協力者によりその重要性を指摘され、急遽、組織や鉱物組成から熱履歴の解析および年代測定を行った。その成果は、国際誌に公表された。この隕石の発見は、非炭素質や炭素質エコンドライトの成因、特に、原岩の組成に関する知見を与え、さらに詳細な研究が必要になったため当研究計画の若干の変更が必要になった。昨年度から進めている特異なエコンドライトに関しては、分担者や研究協力者により同位体分析が行われ、その解析を行なっている。LA-ICP-MSによる鉱物の希土類元素や揮発性元素などの微量元素分析に関しては、標準試料や一部の隕石試料の測定を行い、信頼度の高いデータが出ることを確認した。昨年度から進めている、炭素質型エコンドライト(NWA 011グループ)およびアングライトの研究は進行中である。上記の安山岩質エコンドライトの発見により、若干の計画変更を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に進めた非炭素質型エコンドライトの組織解析と鉱物やガラスの主要元素組成分析を引き続き進める。同時に、炭素質型エコンドライト(NWA 011グループなど)、非炭素質型エコンドライト(アングライトなど)の組織観察と鉱物分析を行う。エコンドライト隕石の鉱物分析や組織データをもとに、熱履歴や衝撃履歴を推定し、母天体の形成過程および原材料物質の推定を行う。数種の隕石(HED隕石、安産岩質エコンドライト)に対し、組織観察やLA-ICP-MSによる主要元素および微量元素(希土類元素)の局所分析を進めそれらの形成過程の検討を進める。揮発性微量元素の測定については、昨年度から標準試料を使用してテストを行ってきた。本年度は実際の隕石試料の定量を開始する。また、組織解析、鉱物組成定量、同位体分析のほぼ分析の終わったエコンドライトに関する結果をまとめ、論文化を目指す。ユレイライトに関しては、既存の元素組成や同位体データを調査すると同時に、中揮発性元素(亜鉛など)と希土類元素の分析を進める。特に、同位体的不均質性を作った原岩組成の推定や、溶融分化や衝突時に置ける元素組成や同位体組成の変化についての考察を進める。組織データや化学組成からの熱的イベントの定量化については、原岩などの特性を考慮するため単純ではないことがわかった。また、研究途上において原岩の揮発性元素の欠乏度は初期の熱変成作用による可能性に気づいた。よって、個々の隕石の原岩の特性、また、経験した火成プロセスについてさらに詳細に検討する必要がある。研究成果は国内外の学会で発表する。
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Research Products
(16 results)