2020 Fiscal Year Annual Research Report
水が引き起こす化学進化-高分解能AFMによる前生物的RNA合成のその場観察-
Project/Area Number |
19H02015
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
荒木 優希 立命館大学, 理工学部, 助教 (50734480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 善博 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00544107)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水和 / 吸着 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、原始地球の海水中で起こったと考えられる前生物的RNAの形成過程を原子スケールで観察し、界面水が関わる糖重合メカニズムの解明を目指している。2020年度は電解質が生体高分子の吸着に及ぼす影響を実証することを目的とし、主にマイカ基板上で、特徴的な形状になるよう設計したヌクレオチドオリゴマー、リボースの吸着をその場観察した。その結果、これらの吸着がマグネシウムイオンによって顕著に増大し、二次元膜を形成することを明らかにした。 周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いて、2つの円が連なった形状になるように設計したヌクレオチドオリゴマーを溶かした純水中でマイカ基板上を観察したところ、電解質を添加しない状態ではマイカ表面に吸着物は一切見られなかった。その後、イオン濃度が100 mMになるよう塩化マグネシウム溶液を加えたところ、直ちにマイカ基板が吸着物で埋め尽くされる様子を観察した。ただし、吸着物が2次元膜状に吸着したため現在までのところ設計した形状は確認されていない。なお、塩化カルシウム溶液でも吸着物は観察されたが、マグネシウムイオンほどの吸着促進効果は見られなかった。この傾向はリボースでも同様で、純水中では吸着が皆無であるものの、マグネシウムイオンを添加することによって吸着が顕著に促進された。また、マグネシウムイオンによる吸着の増大はカルサイト基板上でも観察された。次年度は、吸着量に対する電解質の濃度依存性を検証するとともに、界面水の構造変化をその場観察により明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、本研究の目的の一つであった粘土基板上へのヌクレオチド吸着に対する電解質の効果について、親水性カチオンの特異的な効果を明らかにできたため。マイカに限らず、モンモリロナイトなど表面電荷密度の異なる他の粘土鉱物での実験も当初行う予定であったが、年度前半に実験を従来通りに実施することが困難であったため、やや研究スケジュールを変更した。他の粘土鉱物を用いた実験は、2021年度に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
マイカ上での観察では、生体高分子を固定するためにマグネシウムイオンを始めとする電解質が一般的に用いられる。これは、マイカ表面に吸着するカチオンが生体高分子と基板間の中継ぎとなるためであると考えられているが、今回、カルサイト上でも同様の効果が見られたことから、当初仮定したように吸着の障壁となる界面水にカチオンが作用している可能性が高まった。今後は、マイカや粘土鉱物上の電解質による水和構造変化をその場観察を中心に行い、界面水の構造と吸着量の相関を明らかにする。
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Research Products
(3 results)