2021 Fiscal Year Annual Research Report
パルス幅がレーザピーニングにおける残留応力生成と疲労強度に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
19H02228
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
崎野 良比呂 近畿大学, 工学部, 教授 (80273712)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 康寛 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (40304331)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | レーザピーニング / 疲労 / 残留応力 / パルス幅 / ハンドヘルドレーザ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、レーザピーニングの施工条件のうち、フルエンスとスポット径が生成される残留応力に及ぼす影響について検討を行った。フルエンスの検討では、スポット径一定の場合、フルエンスの増大とともに最大圧縮応力および圧縮残留応力付与深さともに増大することがわかった。ただし、スポット径をを絞ると、フルエンスを増大させても最大圧縮応力は頭打ちとなることもわかった。また、スポット径が異なる場合、フルエンスの大小だけで最大圧縮応力および圧縮残留応力付与深さの大きさが決まらないこともわかった。そこでスポット径の影響に関しての検討を行った。一定のフルエンスでスポット径を200,400,600μmと変化させた場合、スポット径200μmがもっとも圧縮残留応力付与深さが小さく、最大圧縮応力ではスポット径600μmが最も小さいことがわかった。これらの検討により圧縮応力付与の効果の向上にはパルスエネルギーに応じて適切なスポット径を設定することが重要であることが明らかとなった。 また、金属材料特性が圧縮残留応力付与に及ぼす影響についても検討を行った。対象材料は、HT780, SBHS500, SN400, LYL(極低降伏点鋼)とした。各材料の降伏点は各材料の降伏点はそれぞれ,755MPa,592MPa,385MPa,91MPaとなっている。その結果降伏点増加に伴い,最大圧縮残留応力値は増加し,圧縮応力付与深さは減少することがわかった。 これらの検討では、残留応力の測定のみならず、表面あらさやSEMによる表面形状の観察も行っている。 さらに、フェムト秒レーザーを用いたレーザピーニングのセットアップも開始した。 ハンドヘルドレーザによる疲労強度向上効果の確認に関しては、角変形のある突合せ溶接部への適用の検討を行い、角変形があっても効果があることを確かめた。また黒皮の有無による効果の違いについても検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響で直接の打ち合わせが1回しかできなかったが、ZOOMを活用した打ち合わせにより昨年度より意思の疎通は図れた。 レーザピーニングの照射条件が残留応力に及ぼす影響に関する研究に関しては、施工法が確立したため、多くのパラメータについて検討ができた。疲労試験体への施工も準備は整っているが、設備の制約から最終年度中旬からの施工になる予定である。効率的に進めるため施工条件を厳選して行う予定である。 ハンドヘルドレーザによる疲労強度向上効果の確認に関しても、パルスエネルギーが小さいことによる角変形の影響や黒皮の影響について検討が進められた。黒皮の影響に関しては、結果に疑問点が生じたため再度検討を行う予定である。この様に予定していなかった実験も行うことができている。 研究が順調に進んでいるため、別予算で動いている大阪大学のチームとの共同発表を含めて、4本の論文と多くの学会発表を行い、研究成果を社会に還元した。 この様に全体としては順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、まず施工条件の中でまだ行っていないオーバーラップ率の影響を検討する。さらに、最終目標であるパルス幅が生成される残留応力に及ぼす影響について検討を行う。本研究で使用する供試材として、普通鋼SM490と高張力鋼HT780の2種類の平鋼を用いる。50×50×10mmに加工した試験材に異なるパルス幅でレーザピーニングを施工する。照射時の様子をカメラで観察しながら、施工時にどの様な現象が起こっているのかについても観察を行う。これらの試験片の表面残留応力と残留応力の深さ方向分布の測定を行う。測定にはX線残留応力測定装置と電解研磨装置を用いる。また、表面あらさやSEMによる表面形状の観察も行う。 また、小型突合せ疲労試験体への施工も行い、疲労試験での評価を行う。施工条件は厳選するが、実験パラメータはパスル幅の違いとする。 さらに、ハンドヘルドレーザを用いたレーザピーニング装置での実験では、死荷重の影響の検討を行う。ハンドヘルドレーザは現場での施工が可能なため、部材が死荷重を受けた状態で施工できる。よって、レーザピーニングの施工により死荷重をキャンセルできるためさらなる効果が見込める。そこで、疲労試験機で死荷重に相当する荷重をかけたままレーザピーニングを行い、引き続き疲労試験を行うことにより、その効果を確かめる。 これらの研究が終了すれば、LP装置と位置決め装置、ノズル式レーザヘッド、水の供給装置等をシステム化することにより、実際に大型鋼構造物に適用・実用化できる(申請範囲外)。 また、学会発表に関しても、IIW、VisialJWといった国際会議や国内学会で積極的に発表していく予定である。
|