2020 Fiscal Year Annual Research Report
降雨パターンの膨大さと降雨流出-氾濫過程の不確実性を考慮した水災害リスク評価手法
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19H02241
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 朋人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10554959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 典洋 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10260530)
清水 康行 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20261331)
星野 剛 北海道大学, 工学研究院, 博士研究員 (40750625)
久加 朋子 北海道大学, 工学研究院, 特任准教授 (50751236)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 洪水リスク / 不確実性 / 大量アンサンブルデータ / 降雨パターン / 降雨流出 / 土砂流出 / d4PDF / 適応策 |
Outline of Annual Research Achievements |
大量アンサンブル気候データを用いて現在と将来気候における大雨によるリスクの変化を多角的に評価するための考え方および解析手法を構築した。台風がもたらす大雨を、台風の強度や進行経路の観点から分析するとともに、令和元年に発生し北海道に甚大な被害をもたらした台風19号が進行した経路と類似した進行経路を有する台風がもたらす大雨によるリスクを明らかにし、起こりうる台風の進行経路の幅や気候変動に伴う大雨によるリスクの変化を定量化した。また、気象場データから前線を抽出する手法を用いて日本周辺での大雨を引き起こしうる前線を自動的に抽出し、日本周辺の前線の特性を把握した。さらに、風向風速等の要素の分析を通した前線の自動抽出手法の改良の検討を進めた。河川の計画に用いられる確率規模の降雨量が有する不確実性を極値統計理論および大量アンサンブル気候データの両面から定量化した。これにより、観測によるデータと大量アンサンブル気候データの関係性を明確化するとともに、地球温暖化が進行した場合の気候場において起こりうる大雨が現在の気候での大雨に対して持つ位置づけを明らかにした。また、近接する流域が同時に大雨となる確率を調べ、一つ流域の大雨災害を対象とする検討が近隣流域にもカバーする可能性を検討した。最後に、降雨の流出過程における不確実性や大雨により引き起こされる土砂流出量の算定も実施し、大雨がもたらす被害や危険性の推定のための土台を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は大雨リスクの把握のための考え方・手法を構築した。それらの個別の研究を進めるとともに体系化を図ることで本研究の課題である降雨・流出・氾濫を一体的に考慮したリスク評価が実現する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は以下に示す課題に取り組むとともにそれらを集約することでリスク情報の算定手法を体系化する。 1)大量アンサンブル気候データ(d4PDF)から台風進路や前線の停滞位置に着目して、降雨パターンの分類を進める。分類・体系化した降雨パターンにおいて危険な大雨パターンおよび代表的大雨事例を抽出する。2)d4PDFから得られる複数の降雨パターンと過去の大雨事例における気候場を統計解析する事でこれらの再現性を評価可能な指標を提案する。3)過去の降雨データとd4PDFの双方を活用した、確率雨量の予測手法を構築するとともに、当該手法に基づく将来気候における大雨リスクの評価および極値降雨量の統計的予測手法の構築を行う。4)降雨の時空間的な分布に着目し、d4PDFから降雨波形をグループごとに分類し、各パターンにおける河川のピーク流量等の特徴を明らかにし、破堤確率が高まるような危険な流出パターンを抽出する事で、降雨流出過程の多様性を考慮した水災害リスク評価を行う。5)分類・体系化した降雨パターンと流出パターンにおいて、甚大な被害が想定される組み合わせを抽出することでリスクの大きな被害シナリオを作成する。 6)粗度、河床材料、初期河道形状といった条件が河川の流れに与える影響を分析する。同検討は上記の項目から得られる情報が与えられることによって実施され、河川の流れに影響を及ぼしやすい河道特性を明らかにする。 7)破堤の判定に必要となるパラメータに不確実性を与えた検討を行う。またリスクの大きい被害シナリオでの破堤判定を行う。 8)上記の破堤判定に基づき、破堤の箇所やタイミングが異なる場合を想定した氾濫シミュレーションを実施し、氾濫被害の不確実性を評価する。さらに洪水被害の浸水深・浸水範囲と人口統計や居住形態といった情報を組み合わせることで、人的被害リスクの評価に繋げる。
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