2019 Fiscal Year Annual Research Report
表面分子吸着に応じてパッシブ制御可能なプラズモニックナノモーターの創出
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19H02533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 嘉人 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50533733)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 局在プラズモン共鳴 / プラズモンセンサー / ナノモーター / 光圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属ナノ構造表面近傍の分子の状態や化学反応等に応じて自律的に運動を制御する光駆動ナノモーターの創出を目指し、分子とナノ構造の相互作用に伴う局在プラズモン共鳴変化により光圧が高感度に応答する金属ナノ構造体を研究した。特に、本年度は、シミュレーションによるナノ構造の設計を集中して行った。 長さの異なる2本のナノロッドは、局在プラズモン間の位相差により指向性側方光散乱を生じる。この反作用として、散乱方向と逆向きにナノロッドペアに面内光圧が働く。この光圧を駆動力とするナノモーターを基に設計を行った。この光圧は局在プラズモン共鳴に基づくものであるため、周辺屈折率変化に応じて力の大きさが変化する。今回、片方のナノロッドのみをSiO2で囲んだナノ構造を考えた。つまり、周辺屈折率変化に対して、SiO2で囲んだナノロッドのプラズモン共鳴は変化しない。これにより、周辺屈折率の変化に対するロッド間のプラズモン位相差の変化が増大すると期待される。設計したナノ構造の光散乱パターンを電磁場シミュレーションにより解析したところ、周辺屈折率に対する散乱の指向性が、SiO2を囲んでない場合と比較して大きく変化することが確認された。また面白いことに、SiO2で囲んだロッドのプラズモン共鳴が変化しないため、周辺屈折率を大きくしていくと位相差の逆転が生じ、指向性散乱の方向が逆方向に転ずる様子が見られた。そこで、面内光圧をMaxwell応力法によって計算したところ、周辺屈折率に対して力の大きさが変化するだけでなく、力方向が逆転することも確認できた。従って、周辺屈折率に応じて運動方向を自律的に制御するナノモーターが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目玉としていた、周辺屈折率の変化に伴う局在プラズモン共鳴変化により光圧が高感度に応答する金属ナノ構造体の設計は予想を上回る進展が得られた。特に、周辺屈折率によって光圧の大きさが変化するだけでなく、光圧の方向も逆転するナノ構造を見出した。しかし、今年度予定していたナノ構造の作製プロセスの開発は、SiO2で片方のロッドを囲むことができず完了できなかった。当初、電子線ビームリソグラフィによる二重露光により対応できると考えていたが、原因はわかっていないがSiO2がリフトオフ後に残らないという問題が発覚した。ただ、電子線ビームリソグラフィを3重露光にして、リフトオフではなくSiO2のエッチングにより片方のロッドを囲むことで解決できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に作製したナノ構造体に働く面内光圧は、これまで独自に開発してきた光圧計測法を本研究に応用することで定量評価する。具体的には単一ナノ構造体を中心に配置したSiO2マイクロ構造(MPF:マイクロプラットフォーム)をホログラフィック光ピンセットにより液中で捕捉し、トラッキング部から測定されるMPFの位置ゆらぎを統計熱力学的に解析して捕捉ポテンシャルを求める。ナノ構造体への光照射の有り無しそれぞれの場合でポテンシャル測定を行い、その違いを解析することで面内光圧を定量的に計測する。さらに今回、周辺溶媒交換や表面分子吸着に伴う面内光圧の応答を研究するため、溶液交換できるフローセル内で計測を行う。高透明性のPDMS(シリコン樹脂)でフローセルを作製し、シリンジポンプを用いてMPFが光捕捉から外れない緩やかな速度で溶液交換を行う。HFIP、エタノール、DMSO等の誘電率の異なる溶媒の交換や、タンパク質やDNAなどの非共鳴な生体由来分子(アナライト)を含む溶液の導入による金属表面に修飾したリガンドへの結合、局在プラズモンに共鳴な色素分子の溶液導入による表面修飾したナノ構造体への吸着等に伴うプラズモン共鳴変化を消滅スペクトルや光散乱角度分布の測定によってモニターしながら、ナノ構造体に働く面内光圧の応答を計測する。これにより、吸着分子の種類・量・会合状態等と光圧応答の関係を明らかにする。また、光波長・偏光をパラメーターに計測を行い、面内光圧が最も高感度に応答する条件を明らかにする。
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Research Products
(13 results)