2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of high proton-conductive materials based on optimum molecular motion space construction
Project/Area Number |
19H02554
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
水野 元博 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 教授 (70251915)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 史之 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 准教授 (20432122)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | プロトン伝導体 / プロトン伝導率 / 分子運動 / 固体NMR / 有機結晶 / メソポーラスシリカ / 高分子複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、固体中の分子の運動が関与したプロトン伝導プロセスに着目し、プロトン伝導に最適な分子運動の空間を構築することで、高プロトン伝導性固体材料の開発を目指す。本年度は、プロトン伝導性有機結晶、プロトン伝導性高分子複合膜、多孔質物質を用いたプロトン伝導性材料について開発と物質内部の構造・分子運動の解析を行った。 プロトン伝導性有機結晶については、ペンタジホスホン酸とイミダゾールからなる有機結晶を調製し、X線結晶構造解析と固体NMRを用いてプロトン伝導キャリアとなるイミダゾール周辺の局所構造と水素結合ネットワークを明らかにし、プロトン伝導経路を考察した。プロトン伝導性は、結晶の調製法により大きく異なり、プロトン伝導性の高い結晶では、イミダゾールの運動性が高いことが分かった。 プロトン伝導性高分子複合膜については、アルギン酸にイミダゾールを加えた複合膜について、プロトン伝導性とイミダゾール分子の運動性との関係を調べた。イミダゾールの量が少ないときは、高分子鎖間にイミダゾールを介した水素結合による架橋が形成され、イミダゾール分子は架橋内でフリップ運動をしていることが見出された。架橋内でのフリップ運動は理論計算を用いて考察を進めている。 多孔質物質を用いたプロトン伝導性材料については、メソポーラスシリカ(MCM-41)を用い、細孔内部の表面をホスホン酸基を有する分子(2-(ジエトキシホスホリル)エチルトリエトキシシラン(PETES))で化学修飾し、細孔内にイミダゾールを導入した。固体NMRと熱重量示差熱分析(TG/DTA)により、シリカ表面に付いたホスホン酸基の割合とイミダゾールの導入量を明らかにした。試料は高温140 ℃くらいまで安定であった。プロトン伝導率はイミダゾールの導入量が増えるにつれて上昇し、イミダゾールがプロトン伝導キャリアとして働いていることが確かめられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最適な分子運動空間の構築を念頭に置き、プロトン伝導性有機結晶、プロトン伝導性高分子複合膜、メソポーラスシリカを用いたプロトン伝導性材料の開発と構造・分子運動の解析を順調に進めることができた。 プロトン伝導性有機結晶については、X線結晶構造解析と固体NMRによる解析により、プロトンキャリアの周りの空間と分子運動状態を正確に調べることができた。これらは本研究の今後のプロトン伝導性有機結晶の設計に重要な情報である。 プロトン伝導性高分子複合膜における高分子鎖間のイミダゾールを介した水素結合による架橋形成、及びイミダゾール分子の架橋構造内でのフリップ運動は本研究で初めて観測された。これらの構造・ダイナミクスについて理論計算を用いて解析を始めた。 メソポーラスシリカを用いたプロトン伝導性材料については、メソポーラスシリカ内の化学修飾やプロトンキャリアであるイミダゾールの導入に成功し、開発が順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
プロトン伝導性有機結晶については、アルキルジホスホン酸とイミダゾールの結晶やアルキルジカルボン酸とイミダゾールの結晶などについて、結晶調製法の違いがプロトン伝導性、局所構造、イミダゾールの運動性にどのように影響するかを詳細に調べ、試料調製法を確立する。 プロトン伝導性高分子複合膜における局所構造や分子運動状態とプロトン伝導性の関係を理論計算も含め、より詳細に調べる。また、用いる高分子やプロトンキャリア分子も変えて新規なプロトン伝導性高分子複合膜の開発も進める。 メソポーラスシリカを用いたプロトン伝導性材料について、今年度の結果をもとに改良し、プロトン伝導性の向上を目指す。また、内部構造・分子運動を詳細に解析しプロトン伝導メカニズムの解明を進める。
|
Research Products
(11 results)