2019 Fiscal Year Annual Research Report
有機結晶表面への光キャリア注入と光誘起二次元超伝導の創出
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19H02584
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
須田 理行 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (80585159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 顕一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00634982)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 二次元超伝導 / フォトクロミズム / キャリアドーピング / モット絶縁体 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らはこれまでに、フォトクロミック単分子膜を電界効果トランジスタ界面に組み込んだ光駆動型トランジスタを開発し、界面光異性化反応に伴う双極子変化を"光応答性電気二重層"として利用することで、有機強相関電子系物質における光誘起超伝導転移の観測に成功してきた。一方で、同原理に基づき誘起された超伝導相はデバイス"界面"に存在するため、基板やチャネル層のバルク部分が障害となり、適用可能な物性評価手法は限られていた。そこで本研究では、有機単結晶表面にフォトクロミック単分子膜を直接自己組織化させる手法を確立し、"デバイス構造を用いないバルク結晶表面への光キャリア注入"を実現すると共に、結晶"表面"において光誘起超伝導転移を観測することに成功した。また、上部臨界磁場の角度依存性測定により、誘起された超伝導相が二次元性を有することを明らかとした。更に、デバイス界面では困難であった赤外反射率測定による超伝導転移過程の分光的観測が可能となり、実際に結晶表面におけるモット絶縁体/超伝導(金属)相転移を分光的に観測することにも成功した。走査型プローブ顕微鏡によるトンネル分光、強磁場下での輸送測定など、これまで不可能であった種々の測定計画を進めており、有機強相関電子系におけるフィリング制御型超伝導機構の解明に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初計画していた結晶表面へのフォトクロミック分子の自己組織化および光誘起超伝導転移の観測が計画以上に順調に進展し、2年目に計画していた超伝導相の次元性評価や赤外分光による相転移過程の観測まで研究を進めることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
①赤外反射測定による超伝導相の空間分布評価: 赤外反射率測定は、絶縁体-金属(超伝導)転移を光学伝導度として直接プローブ可能な手法であるのに加え、顕微分光法を併用することで、超伝導相の二次元空間マッピングも可能となる。本研究では、特に中~遠赤外領域のプラズマ反射付近を詳細に検討し、光誘起超伝導相の空間分布を詳細に評価する。超伝導ギャップの評価には遠赤外領域の詳細な評価が必要なため、必要に応じてSPring-8など放射光も利用する。 ②強磁場下輸送測定による超伝導相の次元性評価: 東北大・金研の強磁場施設を利用し、上部臨界磁場の角度依存性測定を行う。試料に対する精密な磁場方位の制御のため。2軸回転プローブを用い、光誘起超伝導相の明確な次元性評価を行う。また、強磁場下のドハースファンアルフェン効果測定により金属相における次元性、フェルミ面の評価も同時に行う。 ③走査型トンネル分光測定による超伝導機構の評価: 極低温超高真空走査トンネル顕微鏡を用いたトンネル分光測定により、光誘起超伝導相の状態密度、超伝導ギャップ、対称性など超伝導の機構を直接反映する情報を得る。また、強磁場を利用した磁場効果、部分的光照射による近接効果など、特殊環境下での超伝導状態についての情報を実空間で議論することが可能である。これらの情報を用いて、従来手法では得られなかったフィリング制御型超伝導転移についての情報を得、その機構を検討し、バルク超伝導との相違を議論する。
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Research Products
(11 results)