2019 Fiscal Year Annual Research Report
Operando vibrational spectroscopic measurements at metalloenzyme-modified electrodes toward developments of bio-inspired electrocatalysts
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19H02664
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八木 一三 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (40292776)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / 自己組織化膜 / 膜蛋白質 / 一酸化炭素還元酵素 / 表面増強赤外吸収分光 / テラヘルツラマン散乱分光 / 振動和周波発生分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
表面増強赤外吸収(SEIRA)分光法を用いて、電極表面に膜蛋白質である一酸化窒素還元酵素(NOR)の有無により、電極/溶液界面における脂質二重膜(BLM)の形成過程の違いが生じることを明らかにすることができた。具体的には、SEIRA活性なAu薄膜をSiプリズム表面に構築し、さらにその表面にカルボン酸基末端およびヒドロキシ基末端を有する炭素鎖数3のアルキルチオールを混合して親水性表面を有する自己組織化単分子膜(SAM)を構築した。まずは親水性SAM膜表面へのBLM構築過程を観測するため、赤外分光で測定しながら、界面活性剤と混合した脂質分子を添加し、一定時間が経過した後、界面活性剤を優先的に吸着するバイオビーズを添加した。バイオビーズを添加すると水のOH伸縮領域の吸収が急激に減少し、一方で直鎖アルキル基のCH伸縮領域のバンドが増大しながら低波数シフトすることを見出した。このOH伸縮バンドの減衰面積強度とCH伸縮のピーク波数を時間に対してプロットすると、2つの変化が同期しており、界面活性剤が除去されると、界面の脂質分子が配列してBLMを形成し、それにより界面の水が失われ、ち密なBLMが形成されることが示唆された。CHバンドの波数は固体のアルキル鎖のそれと近い値にまで低下していた。ただし、膜蛋白質がない状態では、この変化には2時間以上の時間が必要だった。一方、カルボン酸基末端へのアミド結合形成に基づき、NORを固定した状態で同様の方法でBLMの構築を試みると、バイオビーズ添加以前に既に比較的密なBLMが形成されており、添加後、10分以内に結晶状態に近い密なBLMが形成された。このことは膜蛋白質の存在が、BLMの形成を促進しているということであり、膜蛋白質と脂質分子との親和性を示す結果となった。 この他、テラヘルツラマン分光の整備と和周波発生分光の整備も並行しておこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの分光法を同じ系に使用するための素地が確立された他、一酸化窒素還元酵素(NOR)については、脂質二重膜との親和性が高いこと、脂質二重膜に埋め込まれた状態であってもなくても一酸化窒素還元能にはほとんど変化が認められないことなど、有益な知見が得られた。NORについては一酸化窒素(NO)還元機構の解明を目的としており、脂質二重膜による界面水の除去ができたことにより、NOが吸着した際のバンドの観測が十分可能になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、一酸化窒素還元酵素(NOR)については、下地となる自己組織化膜(SAM)の鎖長を変化させて、NORの配向性が変わるかどうか、あるいはその周辺に構築される脂質二重膜(BLM)の疎密が影響されるか否かを明らかにする他、配向が確定して周辺にBLMが密に存在している条件で一酸化窒素(NO)還元反応をオペランド計測し、NO還元機構を解明できるよう、検討を進めてゆく。 次のターゲットである酸素還元酵素についても当初はラッカーゼ(Lac)を検討していたが、シトクロムc酸化酵素(CcO)が入手できる可能性が生じたので、NORにおけるNO還元機構が一段落したら、CcOにシフトする方向で考えたい。
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