2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of temporal effects on plasmon-induced chemical reactions and fabrication of photochemical reaction fields
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19H02737
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上野 貢生 北海道大学, 理学研究院, 教授 (00431346)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プラズモン共鳴 / 位相緩和時間 / 表面増強ラマン散乱 / 光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
パルス幅17 fsのフェムト秒レーザーをビームスプリッターで2つのビームに分割し、光学遅延回路を含むマイケルソン干渉計により2つのレーザーパルスを同軸上に形成した。顕微鏡下で金ナノ構造の自己相関波形を計測するため、プリズムペア―を用いて分散補償を行い、対物レンズ下で最もパルス幅が短くなるように、BBO結晶からの第二高調波の自己相関波形を測定しながら最適化を行った。様々な構造間距離を有するナノギャップ金2量体構造や金ナノブロック構造の自己相関波形を金からの2光子発光を用いて計測したところ、構造周期によってプラズモンの位相緩和時間が変化することを明らかにした。これは、遠方場でのプラズモンのカップリングに起因しており、これまで位相緩和時間は数 fs以下と考えられてきたナノギャップ金2量体構造(ギャップ幅 5 nm)の位相緩和時間が5-6 fs程度と結合系プラズモニックナノ構造の構造設計次第では長寿命化できることを明らかにした。重要な点は、近接場増強が、プラズモンの位相緩和時間に大きく影響を及ぼしていることを明らかにした点である。一次元フォトニック結晶上に、上記と同じ設計のナノギャップ金2量体構造を作製して、分光特性を検討するとともに、近接場励起スペクトル計測や表面増強ラマン散乱計測を行ってみたところ、プラズモンとフォトニック結晶のストップバンドのバンド端が重なる波長で強い光電場増強を確認した。そこで、干渉型ポンプ&プローブ測定によりプラズモンの位相緩和ダイナミクスを計測してみたところ、自己相関波形のブロード化と顕著なビートシグナルが観測された。これは、フォトニック結晶や金ナノ構造だけでは観測されないことから、強いモード間のカップリングとプラズモン位相緩和の長寿命化を伴っている。このことから、プラズモンの長寿命化が近接場増強に密接に関連していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、種々の結合系プラズモニックナノ構造を設計・作製し、そのプラズモン共鳴の位相緩和ダイナミクスを制御して分子検出の高感度化や光化学反応の効率化を実現することに主眼を置いている。結合系プラズモニックナノ構造では、ナノギャップ金2量体構造と同じ共鳴波長を持つ金ナノロッドをナノギャップ近傍に配置したり、一次元フォトニック結晶や遠方場カップリングを利用したりするなど、新たな構造設計の提案などもあり順調に研究が進んでいる。一方、プラズモンの寿命が高感度分子検出や光化学反応に与える影響を明らかにするためには時間分解計測システムの構築が不可欠であるが、わずか数fsの位相緩和時間を持つナノギャップ金2量体構造の位相緩和ダイナミクスを明らかにすることが可能な計測系を本プロジェクトで構築し、プラズモンの寿命が光電場増強効果や分子計測の感度に影響を及ぼすことを明らかにした。また、これにより結合系プラズモニックナノ構造の構造設計を変化させることにより、プラズモンの位相緩和時間も制御できることが明らかとなり、ほぼ当初の研究目標を達成した。したがって、当初の計画通りに研究が進行しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、結合系プラズモニックナノ構造を設計・作製し、プラズモンの位相緩和時間が光電場増強や表面増強ラマン散乱の増強因子に与える影響を明らかにした。また、シングルフェムト秒の位相緩和ダイナミクスを測定可能な時間分解計測システムを構築し、プラズモンの位相緩和ダイナミクスの計測と構造設計の最適化を導出することが可能であることを明らかにしてきた。そこで、今後は、最適化された構造設計を用いて、プラズモンの位相緩和ダイナミクスがプラズモン誘起光反応の効率に与える影響を明らかにすることを目的とする。メロシアニンのPMMA薄膜をナノ構造体基板上に成膜し、2光子光フォトクロミック反応によりプラズモンの寿命が光反応速度に与える影響を明らかにする。すでに、これまでの研究においてプラズモン誘起光反応を定量測定する方法を確立しており、本研究を達成するための準備は整っている。
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Research Products
(30 results)