2019 Fiscal Year Annual Research Report
D-マンノ-ス骨格を持つ糖鎖による免疫・炎症反応制御とその分子基盤の解析
Project/Area Number |
19H02902
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
戸田 雅子 東北大学, 農学研究科, 教授 (10828429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐分利 亘 北海道大学, 農学研究院, 講師 (00598089)
比能 洋 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (70333333)
新谷 尚弘 東北大学, 農学研究科, 准教授 (70374973)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マンノース / 樹状細胞 / 免疫調整機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
真菌類や植物には結合様式の異なる様々なα型とβ型のマンナン(D-マンノ-スを含む多糖類)が含まれる。マンナンは「免疫系に対する機能を持つ食品成分」と注目され、その機能性の科学的解析が求められている。本研究はマンノ-ス骨格を持つ分子の免疫学的な意義を明らかすることを目的とする。また、日本の国菌と言われる「麹菌」を用いてマンノシル化アレルゲンを発現する麹菌を構築し、抗アレルギ-作用を持つマンナン分子の作製を目指す。本年度はまずβ型マンノオリゴ糖の調製を行い、その免疫機能性を解析した。その結果、β-Man-(1→4)-Manやβ-Man-(1→4)-Glc骨格を持つオリゴ糖の中で、β-1,4-マンノビオースがマウス骨髄樹状細胞を高レベルで活性化することが明らかになった。また、α型マンナンをβ-1,4-マンノビオースや他の多糖類と共に樹状細胞を刺激すると、樹状細胞による抗炎症サイトカイン産生が増強されることを見いだした。αマンノオリゴ糖に関しては、α-1,2およびα-1,6結合への伸長方向が任意に制御可能な保護基の組み合わせによるαマンノオリゴ糖の合成ルート構築を実施した。この目的を満たす共通中間体の最適化を行い、中間体を使用することによりそれぞれのα-1,2およびα-1,6結合型の直鎖オリゴ糖をベンジルグリコシド体として調製するルート構築に成功した。マンノシル化アレルゲンを発現する麹菌に関しては、オボアルブミン(OVA:モデルアレルゲン)の cDNAを麹菌グルコアミラーゼglaAの触媒ドメインをコードするDNAの下流に連結し、GlaA-OVA融合タンパク質として麹菌で発現させた。2日間液体培養した培養上清500 µL分をSDS-PAGEに供し、Coomassie Brilliant Blue R-250染色したところ、OVAの発現が確認できたが発現量は低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、β型マンナンの調製を行い、β型マンノオリゴ糖サンプルの中から樹状細胞に対して活性化能を持つものを同定した。さらにα型マンノオリゴ糖サンプルの合成ストラテジーを確立できた。マンノシル化アレルゲンを発現する麹菌に関しては、モデルアレルゲンの発現が確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はα型マンノ-ス骨格を持つ直鎖状オリゴ糖およびmycobacterium型分岐オリゴ糖の合成、固相合成法による迅速合成などへの展開を実施する。それらのα型マンノオリゴ糖の免疫機能性を樹状細胞や小腸上皮細胞の培養系を用いて解析する。α型そしてβ型マンノオリゴ糖サンプルの中から、樹状細胞において高レベルの抗炎症性サイトカイン産生を誘導したものを選択し、その「免疫機能性の発現機序」を解析する。さらに、昨年度より開始した卵白アレルゲン(オボアルブミン:OVA)を発現する麹菌システムの構築を継続する。OVAコドンを麹菌コドンに最適化した発現コンストラクトを麹菌に導入し、OVAを高発現する麹菌の構築を行う。免疫学的解析は戸田雅子(研究代表者)が行う。α型そしてβ型マンノオリゴ糖サンプルはそれぞれ比能洋(研究分担者)と佐分利亘(研究分担者)が調製する。麹菌システムの構築は新谷尚弘(研究分担者)が担当する。
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